アンモニアは救世主か
- 2021年12月22日
昨日の新聞に、「石炭火発の脱炭素 アンモニアが鍵」という特集が組まれていました。 COP26では議長国の英国や国連事務総長が「先進国は2030年までに、その他の国は2040年までに石炭火力を廃止すべき」と参加国に働きかけてを行っています。
そのCOP26の場で、岸田氏が演説を行いましたがその内容は、「日本は、アジア・エネルギー・トラジション・イニシアティブを通じ、化石火力をアンモニア、水素などのゼロエミッション火力に転換するため、1億ドル規模の先導的な事業を展開します。」というようなものでした。
さて、火力のゼロエミッション(ゼロエミ)化について岸田氏は「火力発電したときに発生したCO2を回収して地中に埋めたり、燃やしてもCO2を排出しないアンモニアを石炭に混ぜて燃やすことで、発電所が排出するCO2を削減する取り組み。」そして、「地中に埋めることは(CCS)、既に取り組みを始めているが、アンモニアについては実証実験の段階。」としています。
しかし、果たしてそこまで期待できるものなのでしょうか。
CO2を地中の地層に長期貯留させる技術については、国内唯一苫小牧市の沿岸にプラントが建設され、2016年4月~2019年11月まで実証実験を実施、近隣にある製油所から発生する排ガスからCO2を分離・回収、圧縮した後に苫小牧沖の地下深くに送り込みと言う手法ですが、この実証実験で累積約30万トンを地下に埋め込みました。
しかし問題は、コストが高すぎることで、今の段階では1トン処理するのに約7,300円がかかり、日本の年間排出量約11億トンで換算すると約8兆3,600億円となってしまいますし、大量のCO2を完全に地中に長期貯留する技術は、確立されていません。
また、遠く離れた火力発電所からCO2をCCSに運搬してくるための対応はパイプライン以外、開発されていません。
また、京都大学の松下和夫名誉教授によると、<石炭にアンモニアを20%混焼させてCO2発生を抑えるとのことですが、石炭火力に20%のアンモニアを混焼させても、CO2の排出量は20%しか減少しないので、それでも現在のLPG火力の2倍以上が排出されることになり、また、アンモニアの燃焼そのものからはCO2が排出されないとしても、窒素酸化物窓大気汚染物質が排出される。
さらに、アンモニア1トンを製造するために、約1.6トンのCO2が排出される。
例えば、国内主要電力会社の全ての石炭火力で20%のアンモニア混焼を実施した場合、約4,000万トンのCO2が削減されると試算されるが、そのためには年間約2,000万トンのアンモニアが必要となる。その製造に伴い、約3,200万トンのCO2が排出される。
従ってネット(正味)のCO2削減量は約800万トンで、約4%の削減にしかならない。ちなみに2,000万トンのアンモニアは現在の世界全体の全貿易量に匹敵する。このような膨大なアンモニアをどのように確保するのだろうか。>と疑問を呈しています。
また、この政策は、「今後も石炭火発を継続していく」と言うことが前提であり、今回のCOP26において46ヶ国が署名した「脱石炭火力の廃止、新規建設の禁止」に署名せず、アジア各国に石炭火発を輸出している日本は3度目の「化石賞」を受賞しました。
世界の潮流にまたも竿を差す日本、本当に温暖化を防ぐ努力をしようとしているのかが、世界から問われ続けています。