エネルギー基本計画(ブログ3780)
- 2024年12月20日
エネルギー基本計画案が政府から示されました。
過去には、3・11の東日本大震災によって引き起こされたフクシマ原発事故の反省から、当時の民主党政権が事故翌年に示したエネルギー戦略では「30年代に原発稼働ゼロ」という方針を立てましたが、その後の自民党安倍政権で「可能な限り原発依存度を低減する」に変わり、ついに岸田政権では、脱二酸化炭素と、GXにおける産業のデジタル化によって電力需要増を理由として、原発再稼働の促進、稼働期間の延長(最大60年)、リプレイス(建て替え)をエネルギー基本計画に盛り込むことを明らかにし、この度の(案)では、「可能な限り原発依存度を低減する」という文言が削除されてしまいました。
昨日の新聞では、JR北海道が新千歳駅・小樽駅の使用電力を来年度から再生可能エネルギーに転換することを発表、引き続き環境に優しい鉄道の実現を図る旨の考えも明らかにしました。
また、石狩市や苫小牧市などに進出する大規模のデーターセンター(DC)では、ほぼ電力を再エネで賄う方針を示しています。
なにより、北海道はこれからGX(グリーン・トランスフォーメーション)産業に転換することを未来の方向性として示し、8つのプロジェクトとして①洋上風力発電②次世代半導体③データーセンター④水素⑤SAF(持続可能な航空燃料)⑥蓄電池⑦海底直流送電⑧電気及び水素運搬船 に関わる産業を優先的に支援し、これらGXに関わる資金・人材・情報を集積してアジア及び世界の「金融センター」を実現する事を目指しています。
北海道は、今後の産業と暮らしに関わる全てに再エネを中心とした地域の発展を目指しています。
また、来年4月以降に建てられる新築住宅は、「省エネ基準」に適合する事が義務づけられます。2030年までには、その基準が一段と厳しい「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH=ゼッチ)」水準に引き上げられ、天井や壁には高性能断熱材、無論、屋根には太陽光発電が必置、熱交換器、窓は3層ガラスと樹脂サッシ、年間を通じてエアコン1台で全ての部屋を快適にし、エネルギー消費を実質ゼロにしてCO2排出も同様にゼロとすることになります。さらに、オフィスビルや商業施設などの業務用の新築も、30年以降は「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB=ゼブ)」が求められます。
すなわち、政府がエネルギー計画案で示している、「今後は半導体やDCなど電気需要が増加する。したがって原発が必要だ」とは、ならないのです。
人口が減少し、生活のほぼ全てに省エネ・再エネが推進されれば、電源の需要は減少するはずです。期待のAIやITも、半導体の進捗で限りなく低電力となっていくでしょう。
併せて、政府は、今回のエネルギー計画で、原発の新設費用を約7,000億円と試算していますが、この試算は世界の笑われ者となっています。
既にフランスや米国では原発の新設にかかる費用を2兆円以上と見積もっています。
電気代は原発が一番高くなりますし、廃炉にも多額の費用(既に福島原発には約2兆円が投入されている)がかかり、最終処分場の目処も立っていません。
政府は、現実に即した「エネルギー基本計画」とすべきではないでしょうか。