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カジノに大儀無し

  • 2018年06月17日

 カジノ解禁に走っている与党、自民党は別として公明党の支持母体である創価学会の会員の中には、家族がギャンブル依存症となり家族崩壊や一家離散となった経験がある方もおられると思いますし、平和と福祉を標榜する党として博打は最も気を遣わなければならないものの一つでは無いかと思います。

 2009年の厚労省の調査では、ギャンブル依存症の生涯有症率は、米国1.4%、英国0.8%、スウェーデン1.2%に対し、日本男性は9.6%、女性は1.6%と圧倒的に高くなっています。

 イギリスはブックメーカーがあり、プロスポーツだけではなくアマチュアスポーツ、クリスマスの天気、ノーベル賞など何でも賭け事の対象にしますが有症率は高くありません。

 日本は、公営ギャンブルの他、パチンコ、麻雀、時代によっては丁半博打、チンチロリン、花札など、まち場でのギャンブルも横行していたことが原因なのか、熱くなる性格なのかは判りませんが、各国に比較して有症率が異常に高くなっています。

 さて、我が国では、ナゼ賭博を禁止しているのでしょうか。

 カジノに係る行為は、単純賭博罪(刑法185条)、常習賭博罪(刑法186条1項)、賭博場開帳罪・博徒結合罪(刑法186条2項)、富くじ罪(刑法187条)などの構成要件に該当する行為です。

 したがって、カジノ施設の設置及び運営を解禁しようとするのであれば、それらの犯罪の構成要件に該当するにもかかわらず、違法性が阻却される(退けられる)特段の理由が明らかにされなければなりません。

 また、刑罰法規の基本法である刑法の適用については、日本国内の特定の地域(例えばIR施設設置地域)においてのみ、その適用を除外することができないことはいうまでもありません。

 刑法185条に関わる最高裁の保護法益の判例では賭博について「国民をして怠惰浪費の弊風を生ぜしめ、健康で文化的な社会の基礎をなす勤労の美風を害するばかりではなく、暴行、脅迫、殺傷、強盗その他の副次的犯罪を誘発し、又は国民経済の機能に重大な障害を与えるおそれすらあり、公共の福祉に反するもの」と判事しています。

 また、賭博には不正がつきものであり、カジノといえども例外では無いと思います。

 これまで経験の無かった、チップの偽造、すり替え、カードへのマーキング、ディーラーとの内通などの他、カジノは、各国の貨幣を扱い、その上限はありません。

 例えば中国元をカードなどを利用してチップに替え、そのチップを円に替え、それを中国の銀行に入金してロンダリングするなどが懸念され、マネーロンダリング対策・テロ資金供与対策の政府間会合である「FATF(ファトフ:金融活動作業部会)」でもカジノをマネーロンダリングに利用されるおそれのある「非金融機関」として指定しています。

 加えて、賭博には昔から反社会的組織の介入が付きものと言われます。

 事業主体として参入しなくても、事業主体への出資、従業員の送り込み、事業主体からの委託先、下請けの参入、カジノ利用者をターゲットとしたヤミ金融、カジノ利用制限者を対象とした闇カジノの運営など、直接の暴力団員でなくてもその周辺者、共生者、元暴力団員などを通じて関与することが十分可能で有ることを日弁連も指摘しています。

 さらに、買い物依存やギャンブル依存に起因して消費者金融やクレジットカードを利用して借金を重ねることにより、行き着くところ多重債務に陥いり、自己破産、一家離散、果ては自殺という悲しい出来事が絶えることがありません。

 (株)日本信用情報機構によると、ギャンブルを要因とする債務者を含め、全国では平成25年で153万人の多重債務者がおり、自己破産を申し立てるのは年間約17万人であり、民事再生や任意整理の手続きも含めて弁護士に債務整理を依頼する人はほんの一部で、依然として500万人以上(多重債務者含む)の人が現在も借金の返済に苦しんでいる一方、先頃の厚労省調査によると、アルコール依存症の有症者が100万人を越えたと発表されましたが、ギャンブル依存症有症者は560万人とも推定され、その深刻さが際立っています。

 この間「過払い金返還請求」も一般的になって、貸金業者やクレジットへの過払いに対する対策も功を奏してきており、破産法によるところの自己破産申し立てについては免責事項が有りますが、ギャンブルが原因の債務については「債務者の全財産状態に対して、必要かつ通常の程度を越えた不相応な支出を行うことや、賭け事などにより、著しく財産を減少させ、または過大な債務を負担する行為は、破産者の不誠実の表れということ」から免責不許可事由とされています。

 カジノは、その場内において賭け金を貸し付ける仕組みも整えられています。

 併せて、カジノに関わる青少年への影響も大きな問題です。

 北海道でもいくつかの地域が手を上げていますが「北海道青少年健全育成条例」の第1条には「青少年を取り巻く社会環境の整備を促進し、及びその福祉を阻害する恐れのある行為を防止し、もって、時代の青少年が健全に育成される社会の実現に資することを目的とする。」と規定、施策の基本方針には「青少年の健全育成を阻害し、、又はその非行を助長するおそれのある社会環境の浄化を促進すること。」とあり、併せて「青少年の福祉を阻害するおそれのある行為を防止するための活動を促進すること。」とあります。

 どうでしょう?これらのどれをとっても、カジノ法案に大義はありません。

 これが、安倍総理の言う経済戦略だとすれば亡国の経済戦略と言えるでしょう。


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