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コロナで改憲?

  • 2021年05月03日

 今日で、日本国憲法が施行74年目を迎えます。

 さて、今まで憲法改正の必要が無いと思っていた方々の中にも、現下のコロナ禍を考えて改正をした方が良いのではと思っている方が増えたようです。

 共同通信のアンケートでは、新型コロナウィルスなどの感染症や大規模災害に対応するため、憲法に「緊急事態条項」を新設することが必要だと答えた方が57%、必要ないと答えた方が42%という結果となった事が報じられました。

 北海道においても同じような傾向にあり、9条については「すべきではない」が57%となっていますが、コロナ禍に伴い、私権の制限を伴う強い措置が必要と考える方が増えてきている傾向が見られます。

 さて、2012年に自民党が発表した憲法改正草案、18年にたたき台とした憲法改正案にある緊急事態宣言には主に次のように書かれています。

<第9章 緊急事態

 第98条:

 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、

 地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があ

 ると認めるときには、法律の定めるところにより、閣議にかけて緊急事態の宣言を発令

 することが出来る。

 2 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前または事後に国会の承認を得

 なければならない。

 3 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態

 の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要

 がないと認めるときは、法律の定めるところにより閣議にかけて、当該宣言を速やかに

 解除しなければならない。また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするとき

 は百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。

 第99条

 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の

 効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その

 他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な支持をすることができる。

 2 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の

 承認を得なければならない。

 3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該

 宣言に係る事態において国民の生命、進退及び財産を守るために行われる措置に関して

 発せられる国その他公の機関の支持に従わなければならない。この場合においても第1

 4条、第18条、第19条、第21条その他の基本的人権に関する規定は最大限に尊重

 されなければならない。

 4 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣

 言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその

 選挙期日の特例を設けることが出来る。>

 これは、周辺事態や原発による大規模事故や東日本大震災などの大規模自然災害時等を主目的としておりますが、この改正草案にも憲法学者から様々な問題点が指摘されています。例えば、

 ①「等」がある事によって、閣議だけで制限無く緊急事態を宣言できる。

 ②国会には事後報告で良い。

 ③期間の制限も自由となる。

 ④国会の審議を受けず、政令のみで法律に代える事ができ、立法権を掌握して国民の権

  利を否定できる。

 ⑤財政処分に関する国会承認を得ずに、国家財政を自由にできる。

 ⑥同等のはずの都道府県知事や市町村長に命令が出来る。

 いわゆる、国民の自由・権利を剥奪し、専制政治が可能となる。

 等々の問題を孕んでいます。

 さて我が国は、これまで感染症に対する緊急事態に直面した経験が無いことから、新型コロナウィルスに対しても「新型インフルエンザ等対策特別措置法」で対処する事を基本方針としてきました、措置法では対応できないくらいの感染となった事から、3月13日にこの措置法を改正し、コロナウィルス感染症を新型インフルエンザとみなし、第32条に<新型コロナの全国的かつ急速なまん延によって、国民生活および国民経済に重大な影響が生じる恐れがある場合に、(1)緊急事態の概要を示し、(2)緊急事態として実施すべき緊急措置および期間、(3)実施すべき区域を限定して公示する。>(これが緊急事態宣言)ことを付け加え、この緊急事態宣言によって国および都道府県等は具体的な緊急事態措置を講じることが可能となりました。

 この中の「まん延防止緊急措置」の基本は国民に対する要請ですが、最終的には指示も設けられ、科料を含む罰則も用意されていますし、その他にも緊急事態宣言の発出で、医療機関に対してはさらに強い措置を求め、従わない場合は前科となる罰金に処せられることになり、また、国民生活上必要な物資の安定供給やインフラに関わる事業者への対応なども、法律の中で厳しく対処できることになっています。

 さて、今回の憲法改正に関するアンケートでは、コロナウィルス感染症に対する国の対策が後手後手であり、ワクチン接種もいつになるか検討がつかず、その上約1年半にもわたる自粛要請への反発から利己的な行動をする一部の国民に対して、強制力のある対処が必要との思いから憲法改正が必要との考える方が多いのだろうと推察しますが、それは「私権の制限」に繋がり、全てと言っていいほどの権利を自ら放棄することにつながります。

 現在の法律で不備な面があるのなら、法律の新設や改正で対処すべきです。

 そして、自分の行動が家族や友人、勤め先や取り巻く社会にどういう影響を及ぼすことになるのかに思いを馳せるのが、大人としての自覚である事を改めて考えて見ることが必要だと思います。


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