コロナ病床の丸投げ
- 2022年06月19日
政府は、コロナウィルス感染症対策の一環として、感染症法を改正し、都道府県の権限を強化して、都道府県と病院が感染拡大時に患者を受け入れる事などを記した協定を結ぶ仕組みを導入し、病院が協定を守らなかった場合には「罰則」を科すことも検討することになりました。
先のコロナウィルス感染症に際し、病床確保は主に公立病院や公的病院が担い、ピーク時には、民間の病院にも病床の協力を求めましたが、十分な対応になりませんでした。
その事からか、一番大事な医療機関による感染症への対応を、政府が都道府県に丸投げをするというのが今回の法改正の目的だとすれば、感染症という一般の疾病とは違い公的な扱いをしてきた感染症の今までの体制を変えると言うことになります。
政府は、都道府県の方が機動性があると言うでしょう。しかし、財政基盤の脆弱な自治体に任せれば、対応に格差が生じてくることが危惧されます。
国が財政的な支援を確約してくれれば、その心配から解放されますが、その一方で、都道府県間の医療体制の格差が表出し、地域によって患者に対する医療に差が出てくることが想定されます。
無論、広域的な連携も視野に入れていると思いますが、他県の患者を受け入れたがために肝心の自県の患者への対応がおろそかになってしまっては本末転倒です。
また、協定が守られなかった場合、知事に勧告や指示の権限が与えられますが、自県の医師会や医療機関とのトラブルは知事にとってタブーです。
公立病院や大学病院などの高度な先端医療の提供が可能な「特定機能病院」が仮に何らかの理由により受入が出来なかった場合、診療報酬などで優遇されている「特定機能病院」の認定が知事の判断により外されるとしたら、知事と医療機関の間に大きな溝ができることにもなりかねません。自県の医療を確保する事が任務の知事にとって大変な事態を招くことになります。
他方、日本医師会も、強制的な病床確保は望ましくないと述べています。
今、少しずつ下火になっている間に、政府だけでは無く、全国知事会や日本医師会ともに、これまでのコロナウィルス感染症への対応を検証して、国民が安心する感染症対策を講じてほしいものだと思います。