ハンセン病訴訟の政府反応
- 2019年07月16日
ハンセン病家族訴訟について、安倍晋三氏は控訴を見送る判断をしましたが、その判断に至ったとする首相談話では、判決に納得していないという思いが込められていました。
安倍晋三氏は
ⅰ)「きわめて異例の判断でありますが、あえて控訴は行わない」
ⅱ)「今回の判決では、いくつかの重大な法律上の問題点がある」
ⅲ)「政府としては、本判決の法律上の問題点について政府の立場を明らかにする政府声
明を発表する」と話し、
発表した政府声明では
ⅰ)「本判決については国家賠償法、民法の解釈の根幹に関わる問題点がある」
ⅱ)「厚生大臣の偏見差別を除去する措置を講じる等の義務違反については、1996年
のらい予防法の廃止時をもって終了すると熊本地裁が判示しており、受け入れること
はできない」
ⅲ)「偏見差別除去のためにいかなる方策をとるかについては、行政庁の裁量が認められ
ているが、それが極端に狭くとらえられている。人権啓発及び教育については、公益
上の見地に立って行われるものであり、個々人との関係で国家賠償法の法的義務を負
うものではない」
ⅳ)「らい予防法の隔離規定を廃止しなかった国会議員の立法不作為を違法とするが、国
会議員の活動を過度に制約することになり国家賠償法の解釈として認められない」
ⅴ)「損害賠償請求権の消滅時効の解釈については、過去の民法の判決に反するものであ
り、法律論としてはこれをゆるがせにできない」
と表明しています。
政府がこれだけの反論を明らかにしたということは、当然控訴することが前提となるはずです。
今回はそれをしない。それは、安倍晋三氏の言う通り異例の判断です。
では、なぜ異例の判断をしたのでしょうか。
その目的はただ一つ、参議院選挙があるからに他なりません。
これまでの、患者や患者家族が味わった筆舌に尽くしがたい苦難を考えれば、これまでのらい病に関わる政策を率直に謝罪し、その賠償に素直に応じるべきであり、未練たらしく言い訳をしたり判決にいちいち反論をするような政府表明は厳に慎むべきではなかったのかと思います。
上記に示した政府声明のⅱ)にある「らい予防法の廃止」は、当時の菅直人厚生大臣が行ったもので、思い出して欲しいのは菅直人元厚生大臣が全国のハンセン病療養所を訪れ、患者の皆さんや家族の皆さんの声を直接聴き、鹿児島県の星塚敬愛園では1泊し、患者の皆さんと一緒にお風呂に入りました。
それから23年間が経過し、元患者の家族の方々へもやっと光が当たりました。
安倍晋三氏は患者家族と直接会うとのことです。
ぐだぐだ言わずにいてほしいと同時に、1日も早くその苦痛と苦難に相当する賠償を実施してほしいものだと思います。