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ラピダスはバラ色なのか(ブログ3640)

  • 2024年07月25日

 道内の若手経営者を育成する「北海道経営未来塾」が札幌市内で後援会を開き、その講師・ラピダスの東哲郎会長が、ラピダス進出による道内総生産への効果について、2036年ごろまでに「18兆4千億円の付加価値が出る」と試算していることを話したそうです。併せて、世界の消費電力量が急増している現状から、「ラピダスが開発すを目指す回路線幅2ナノメートル(ナノは10億分の1)級は、消費電力を抑えられ、かつ高性能な半導体。AIによる電力需要の急増に対応出来る。」とも話されたようです。

 日本が半導体の製造に国際的に差を付けられて久しくなります。

 そして、半導体のサプライチェーンを持たない日本は、様々な分野において国際的な競争に太刀打ちできない事になり、政府は、改めて半導体技術の開発と生産拠点の設置の力を入れ始めました。

 既に韓国ではサムスン電子やSKハイソニックが国家戦略として展開しており、台湾はご存じの通りTSMC(台湾積体電路製造:タイワン・セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー)が世界でも凌ぎを削っています。日本の半導体メーカーは現在32ナノメートルが主流で、今後24ナノメートルに移行しようとしていますが、サムスンもTSMCも7ナノから5ナノの製造に入っており、TSMCは、現在3ナノの技術を持っているとされ、世界中に約500社以上の取引先を持っています。

 ラピダス社は27年に2ナノの量産を目指していますが、半導体製造では後進の位置にあることは事実です。

 北大に留学している物理工学の研究員にお聞きしたら、「TSMCは毎年約5兆円の設備投資を続けているが、果たして日本政府はラピダス社が世界の半導体メーカーと対抗できるまでTSMCに匹敵するだけの支援を継続できるのか、また、2ナノを開発し量産すると目標を立てているが、販売先を確保出来るのか。」という疑問を呈していました。

 ラピダスの会長は道内総生産を18兆4千億円押し上げる効果を話されましたが、2020年度の道内総生産額は19兆7千億円です。

 会長の言を信じれば、ラピダスの進出で道内総生産額がほぼ倍になる試算となりますが、果たしてそれを鵜呑みにして良いのでしょうか。

 ラピダス社は東京に本社が置かれます。つまり、その利益の多くは道外に移転してしまうことになるのでは。

 道と千歳市は、ラピダス社に特別な支援を行うでしょう、大量の工業用水の提供、下水の処理、電源が不足しないようにと泊原発の再稼働も視野に入る他、インフラの整備に大きな税と地元住民の負担が求められます。

 それらのことも踏まえて、メリットだけでは無く政府、道、千歳市の巨額支援の増や、想定されるリスクについても議論が必要なのではないでしょうか。


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