ロシア人の亡命
- 2021年08月30日
国後島に在住していたロシア人(ロシア人男性)が、ウェットスーツを着て泳いで対岸の標津町に上陸し保護された事件で、札幌入国管理局が経緯などを取り調べた結果、ロシア人は、日本への亡命を希望していることが分かりました。
上川陽子法相は、「申請内容(亡命の)を審査した上で難民条約の定義に基づき、難民と認定すべきものを適切に認定するのが基本だ。」と述べており、亡命扱いをせずに難民として粛々と処理するということにしたようです。
亡命は、自国の政治体制、政治思想、宗教、人種的な理由等によって迫害を受ける恐れがある、あるいは既に迫害を受けていることを理由に他国へ保護を求めることです。
一方、難民条約第1条の定義には「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であること、または政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、その国籍国の保護を望まない者。」とされており、既に迫害から逃れるために国境を越え、外国に逃げた人々のことを言います。国境を越えられず、国内に留まる難民も大勢いるのですが、その場合は難民条約が適用されず、その国の法律に従わなければなりません。
亡命は、その国に残ることによって迫害を受けるであろう十分に大きな理由がある場合
以外、受け入れ国としては相手国との関係悪化が懸念されることから簡単ではありません。
また、日本は難民条約を締結していますが、世界でも類を見ないほど厳しい難民政策を行っており、難民申請をしても認定せず不法滞在者として強制送還することが基本姿勢となっています。先般のスリランカ人「ウィシュマ・サンダマリアさん」のように入管が非人道的な扱いをすることは、これまで何度も指摘されながら改善されていません。
道新によると、今回のロシア人への対応について、「日本は北方四島を固有の領土としているため、この男性は国内を移動したにすぎないが、政府は男性をロシアから国後島に不法入国した外国人として扱った上、難民に該当しない。と判断したとみられる。」と報道しています。しっかりと取材を行った上での記事でしょう。
記事にあるように「男性がロシアから国後島に不法入国した外国人」と定義するならば、4島に在住しているロシア人は、全員不法入国者ということになります。
4島を固有の領土と主張している日本として、ロシアが不法占拠しているという立場
をとり続けていることは、戦後の歴史的な経過から理解できますが、「男性が(日本の)国内を移動したに過ぎない。」というのもナゼか屁理屈に感じるのは私だけでしょうか。
相手がロシア人である事は紛れもない事実です。
亡命を希望しているのであれば、そのことを基本に対処すべきであり、難民と規定するのならば、難民条約に沿った人道的な対応をすべきです。
そして、あえて亡命などを行わず、日本に移住し日本国籍を取得する方法等を教えてあげることも必要だと思います。