万博・超法規的(ブログ3366)
- 2023年10月17日
朝日デジタルによると、25年4月開幕予定の「大阪・関西万博」のパビリオン建設の遅れが深刻な状況になってきたことから、自民党の「万博推進本部」の会合で、24年度4月から適用される建設労働者の時間外労働規制を、「超法規的措置」として規制から外してはどうかという発言が出された事が報じられました。
「人繰りが非常に厳しくなる、超法規的な取り扱いが出来ないのか。」、「災害だと思えばいい。」といったことが出されるたようですが、このことだけで、万博は間に合わないことを自民党も認めた事になります。
当時、維新の会が公約として大阪万博を開催すると大見得を切り、政府を巻き込んで世界85ヶ国が加盟する世界見本市連盟に対し、20年のドバイ万博の後に(実際にはコロナ禍で開催が1年延期となった)大阪万博の誘致をと活動して決まった大阪万博で、決定後は、日本国際博覧会協会を設置しその準備を進めてきました。
ご存じの通り、大阪湾のごみ埋め立て地であった「夢洲」に大阪万博の会場を建設し、その後、その会場のために整備したインフラを利用して「カジノを含むIR」を作り上げ「濡れ手に粟」の経済効果を、など「捕らぬ狸の皮算用」的な構想でした。
具体的な工事が始まると、材料費や人件費の高騰や会場の地盤沈下(もともとごみ埋め立て地)のためにインフラ整備に当初見込み以上の費用がかかることが明らかになり、予算は当初見込みの倍近くに膨らみました。
どうにもならなくなった吉村大阪府知事は、政府に泣きを入れて、「万博は国が主体となって開催するイベント」と費用の負担を要請しました。
しかし、費用の支援だけで解決しないのが、各国パビリオンの建設遅延です。
このままで行けば、25年4月に開幕した時に、会場のあちこちで、まだ工事をしている姿が想像されます。冗談では無く、博覧会協会では、「間に合わなければその場所を芝生など公園として活用する」ということまで検討しています。
そこで、自民党の万博推進本部での発言です。
一体建設労働者をなんだと思っているのでしょうか。休みも必要無いロボットに置き換えているとしか思えません。「お前が現場に立って、時間外規制のない中で働いてみろ!」と言いたくなってきます。
「超法規的措置」とか「災害」ということと、たかが見本市を同等とみている感覚が分かりません。根底にあるのは「日本のメンツ」がかかっているということなのでしょう。
「超法規的措置」とは、人命がかかっているなど緊急性が極めて高い場合の取り扱いのことを意味しますが、過去には、日本赤軍事件で、身柄を開放する法的な理由はがないにも関わらず、人質の生命を重視した日本政府が犯人グループの要求を飲み、獄中にいた連合赤軍のメンバーを開放したという例がありました。
まさしく、人質の人命に関わる事案で「超法規的措置」が取られました。
物見遊山の万博に適応する措置ではありません。そして、この労働法の改正をしなければならなかったのは、あらゆる分野での過労を見て見ぬ振りをしてきた政府であり、それでも建設業、自動車運送業、医師、製糖業などには摘要を5年もの猶予を、すなわち我慢をさせていました。そこに例の発言です。全く無責任極まりない政府ではないでしょうか。
工期を間に合わせるために過労死を生じさせるような事があれば、国際社会における日本の労働環境への評価は地に墜ちることになるでしょう。