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万引き家族

  • 2018年07月03日

 昨日、シネマ・フロンティアのレイト上映に行きました。

 鑑賞したのは、今回カンヌ映画祭でパルムドール賞を受賞した、是枝監督作品の「万引き家族」です。

 画面は、淡々と日常の生活を追っていきます。

 そこの登場する家族は、本当の家族とは言いづらい、どちらかというと「疑似家族」に近い家族(?)ですが、貧しい中にもお互いが優しさに包まれながら生活をしています。

 その家族とは、一家の父親代わりで日々不安定な日雇いで僅かな収入を得る労働者、母親代わりは時給の非正規パート、お婆さんの年金が一家の収入の柱で、子ども達は家出してここに来た女学生、親に捨てられ拾われてここにきた少年、児童虐待を受けてベランダに放置されていた少女もかわいそうだと連れてきた、家族6人の物語です。

 生活のための万引きは、父と少年が担当、そして幼い少女もいつしか万引きに引き込まれていきます。¥

 少年は、当然住民票も無く学校に行かない未就学児童、家出してきた女学生は性風俗に勤め、虐待されていた少女は親から捜索願も出されないまま、この家族に溶け込んで行きます。

 古く狭い家で、血のつながりが無くても本当の家族の温もりの中で生活していましたが、ある時から、生活の歯車が狂い始めます。

 母が、パートのクリーニング会社の不景気により解雇を申し渡され、収入が途絶えます。

 そして、お婆さんが死に、葬式代も無い事から自宅の床下に穴を掘り埋めてしまいます。 その前にはお婆さんの髪をきれいとかし、家族との最後の別れの時間を充分にとり愛情を持って埋葬しましたが、近所から、お婆さんがいないという噂が警察へも届きます。

 また、この家族は生活のためにお婆さんの死後、死亡届も出さずに年金を不正受給していました。

 さらに、虐待されていた少女の両親の廻りからも少女がいない、誘拐されたのか殺されたのか両親から捜索願も出ていない、という事がマスコミに伝わり警察が動きます。

 ある日、少年と少女がスーパーで万引きをする事になりますが、少年がこれ以上少女に万引きをさせたくないとの思いで、わざと自分の万引きがバレるように行動し、店から逃げて怪我をしてしまいます。

 救急車で病院に運ばれてから警察が係わりますが、健康保険も無く治療費も払えないことからこれまでの事が全てが明るみになってしまい、少年と少女の誘拐罪に、そしてお婆さんの死体遺棄、年金の不正受給などで罪に問われ、父は前科があることから懲役が長くなるので、母が全ての罪を引き受けてしまうところで、クライマックスとなりました。

 この物語が語りかけるのは、万引き、日雇いの不安定労働者、雇用の調整弁となるパート労働、家出少女と性風俗、子どもの遺棄、児童虐待、ドメスティックバイオレンス、児童の未就学、年金の不正受給など、現代社会の歪みの中で生活をしている実態ですし、すぐそこにある現実です。

 その現実の描写が悲惨な映像では無く、見た者が安心できる愛情の中で描かれたことが世界でも大きなカンヌ映画祭で評価され、最高賞を受賞したのだと思います。

 是枝監督は「かつて映画が“国益”や“国家”と一体化し、大きな不幸を招いた。」として、パルムドール賞を受賞しても政府からの祝意を受けることを辞退しています。

 この実態に目を向けない政権に対し、強烈なアピールだと思います。


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