中央集権の始まりか(ブログ3591)
- 2024年06月01日
地方自治法改正案が衆院を通過しました。
今回政府が目論んだのは、地方に対する「国の指示権」を拡充することです。
政府が必要だという立法事実は全く無く、提案者の松本剛明総務相も、指示権を行使する具体的なケースを国会で問われても「国民の安全に重大な影響を及ぼす場合」とか「個別法で想定されていない事態」など、さっぱり中身が分かりません。
北大の宮脇淳名誉教授が話しているように「権力の源泉は言葉をあやふやにすること。指示権の行使範囲を曖昧にして解釈の余地を残すことで、武力行使事態なども含め国に強い権限と選択肢を与えてしまう。」と指摘しています。
政府は、大規模感染症の蔓延や大災害時に対応するためと話していますが、今回のコロナウィルス感染症や度重なる大災害に対して、その教訓を生かした「新型インフルエンザ特措法」や「災害対策基本法」で、政府は今でも自治体へ対策を指示できる事になっています。
また、他国との緊急事態に対しては「武力攻撃対処法」に規定されています。
ならば、何を目的に指示権を拡充するのでしょうか。
国会では野党が、「戦争やテロ、大規模災害などの事態に対処するために、『緊急事態条項』を憲法改正の目玉と主張している政府が、事実上の憲法改正を行うためか。」と指摘もありましたが、私は、少し違うことを想定しています。
今回の改正の必要性について政府は「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生または発生のおそれが有る場合」としています。
この場合、「おそれ」が一番の曲者で、政府が「今は問題ないが、今後はおそれに対する備えが大事だ」と言えば、何でも出来る事になります。
喫緊に対応しなければならないのは、「高レベル放射性廃棄物の最終処分場」です。
政府は、最終処分場を何とか概要調査そして精密調査に進め、最終処分場の建設に持ち込みたいのは全国民の知るところです。しかし、現実には文献調査の先は北海道の鈴木知事も佐賀県の山口知事も反対の意向を示しています。
そこで政府は、「最終処分場建設は国民の安全に重大な影響を及ぼす課題である」と位置づけて、自治体に建設を指示しようとしている可能性は否定できません。
更に、農業・農村基本法において、食料安全保障対策の一環として政府が作付け品目の指定を指示することもあるでしょうし、国民を二分するような様々な問題に対して「国民の安全」と位置づければ、政府は自治体を超えて決定を下すことができます。
これは中央集権以外のなにものでもありません。地方自治に大きな影響を与え、国と地方の対等な関係を大きく崩壊させる法案に、自民党・公明党・維新の会・国民民主党が賛成したのです。彼らは、地方自治の重要性や自主性を否定したと言われても仕方がありません。更に、全国知事会をはじめとする地方6団体が大きな声を出さなかったことも指摘しなければなりません。
民主主義や地方自治は憲法の根幹であり、守っていかなければならないものです。
今後、指示権の名の下、沖縄の辺野古のように、「国と地方の対等・協力の関係」が無惨にも粉々にされてしまうのでしょうか。中身の無い岸田氏は一体この国をどのようにしようとしているのか心配です。