介護報酬減額(ブログ3549)
- 2024年04月20日
介護報酬の改定で、訪問介護の「基本報酬」が引き下げられるマイナス改定となりました。22年度は約4割の介護事業所が赤字だったことも判明しました。
今回、厚労省が引き下げの根拠としたのは、高齢者介護施設などに併設された訪問介護が高い収益率を上げていたことを根拠にしていますが、当然といえば当然のことです。併設していれば移動に時間がかからずに連続して介護ができ、稼働時間全てが介護報酬の対象となるからですが、中小規模の事業所ではそうはなりません。
地方に行けば行くほど高齢化が進んでいますから、在宅で介護を行っている場合には訪問介護の支援は必須のサービスとなります。
しかし、地方では当然の様に移動に時間がかかります。A宅で訪問介護を1~2時間行い、次のB宅に行くまでに自家用車でも20分~30分かかる、自転車利用の場合その比ではありませんから、実質の介護の対象となる時間は少なくなり、事業所に入る報酬も限られてきます。一方、ヘルパーさん達に支払う賃金は移動時間も含んでいますから、事業所にその負担が押しつけられ、止むなく廃業への道を選ばざるを得なくなってしまいます。
そのために、ヘルパーさん達の収入を減額すれば、安心して働くことが出来なくなり離職に歯止めがかからなくなるだけでは無く、マンパワーも集まらなくなります。
政府は、この間、在宅介護にシフトしてきましたが、その根幹を担う訪問介護の報酬を下げるとは、本末転倒の処置では無いでしょうか。
厚労省は、「処遇改善加算」を利用すれば最大24.5%を加算できると説明しますが、そのための手続きが煩雑なために小さな事業所では取得しない場合が多いとされ、さらに、最も高い区分の処遇改善加算を取得しても、基本報酬の減額と相殺されて収入が減ってしまうという試算も出ています。
このままでは、先ほど述べたように高齢のヘルパーさんがこれを機会に辞めてしまうことが想定されます。そうなれば、サービスが受けられない「介護難民」が増えて家族が介護するしか無くなり、そのために「介護離職」を余儀なくされてしまうことが懸念されますし、一方では身寄りも無く施設に入ることもできない独居の要介護者は、自宅で孤独死を迎えるしかなくなります。それでも、厚労省は介護報酬を減額するのでしょうか。
高齢化社会と言われて久しくなりますが、介護が必要な高齢者の施策は、政府の都合で切り捨てられてばかりです。若い方々も、「いずれ行く道」である高齢化、自らの問題として安心できる老後を作り上げるために社会全体で「声」を上げるべきです。