住民避難も無責任
- 2016年03月17日
放射能測定が波紋を呼んでいます。
政府は11日に「緊急時迅速放射能影響予測予測ネットワークシステム(SPEEDI)」を自治体の判断で使用することを認めました。
このSPEEDIは、フクシマ原発事故時に放射能汚染がどの方向に、そしてどの濃度で拡散するのか、事故の度合いや気象、地形などのデーターを基に予想する情報システムとして設置されていましたが、政府はこのデーターを公表するとパニックに陥るとして事故後数ヶ月間も公表してせず、逆に、海外からのSPEEDI情報が日本に流れるなど、日本政府の判断に多くの国民が憤りを感じていたという代物です。
その後、政府はこのSPEEDIについての情報を速やかに公表するとしていましたが、いつの間にかこのSPEEDIを活用しない事にしてしまいました。
しかし、原発立地県の知事からは、その活用を求められ政府も自治体の裁量で使用することは認めるとしていましたが、今回、改めて原子力規制委員会がSPEEDIを用いた放射性物質の拡散予測について「信頼性は無い」と判断したことから、原発立地県や立地自治体から、不安の声が出されています。
規制委員会は、「放射線の放射タイミングを事前に予測することは不可能」と指摘し、「かえって避難を混乱させ、被爆の可能性を増大させる」とその理由を述べ、規制委員会田中委員長は、「拡散予測が出れば人々は冷静さを失い、我先にと行動を取りがちだ」とコメントし、地域で測定される放射線量の実測値で判断する仕組みに見直したようですが、果たしてそうでしょうか。
フクシマ原発事故後に発表されたSPEEDIによる放射線拡散予想は、実態の放射線拡散にかなり近く、当時の住民は、「何故早くこの情報を出さなかったのか。知っていれば、わざわざ拡散する方向に避難する事は無かった」とその怒りを露わにしていました。
そして、政府と規制委員会が期待する実測値ですが、その実測を担う「モニタリングポスト」について、再稼働した川内原発では、その周辺に設置されたほぼ半数が住民避難に必要な放射線量が測れない事が明らかになり、同じく高浜原発周辺でも計画数が設置されておらず、さらに設置されていても、すぐに避難しなければならない500㍃シーベルトより低い80㍃シーベルトまでしか測れないものが設置されていることが判りました。
規制委員会や政府が言っていることは、①SPEEDIにより住民が汚染予測を知ればパニックになる。②だから予測では無く実測値に替える。
というものですが、予測はあくまでも予測ですが、地震予測、火山予測、大雨・洪水、竜巻、大雪などの気象予測も大いに参考になるものですし、政府が実測値を素直に発表するとは信じられません(原発に対する信頼は無い)。
であるならば、政府は実測値でも間に合う避難計画策定し、規制委員会はそれを担保しなければ、またぞろ自治体と政府、そして規制委員会の責任のなすり会いとなってしまいます。
いや、今回の国の処置を見ても、責任の所在は既に曖昧模糊となっているのではないでしょうか。