保育園の実態を(ブログ3248)
- 2023年06月14日
異次元の子育て支援の概要が、政府の「骨太の方針」によってまとまりつつあります。
その一つに、今までの「保育が必要」という選考要件を緩和し、誰でも入所できる様にする事も盛り込まれています。
これから、厚労省を中心にその中身が検討されることになるようですが、すでに保育の現場では不安が広がっています。
函館市の子どもサービス課に聞いたところ、市内の保育園(認定こども園含む)の約6割が保育士不足となっているとのことです。
その原因は、先のブログでも掲載しましたが、保育士養成学校へと進学する学生が少なく、卒業しても給料の高い都市部へ流出する事にあります。
養成学校も市内の学校だけでは無く、近隣の自治体や県を越境してまで募集に奔走していますが、学生は保育士になりたいと希望しても保護者が反対をする事が多いそうで、その原因は給料が低いということに有るようです。
保育士の所得は、全産業平均より平均で5万円ほど安いという統計もあるようで、先ずはこれを解決しなければなりません。
保育料はこれまで市が徴収して各保育園に支払っていますが、認定こども園が発足してからは入園契約は自治体ではなく、園と保護者の間で交わされます。
当然、園が提供するサービスの内容によって保育料は違いますし、サービスを膨らませると園児は多くなりますが、園の支出も多くなり、保育料にも反映されます。
自治体からは公定価格どおりの金額しか支給がされませんから、園はサービスの提供と園の財政的運営の狭間で苦しい運営を余儀なくされ、そのしわ寄せは人件費に及びます。
また、障がい児保育は、児童に「療育手帳」が交付されていなければ自治体からの追加補助は受けられませんが、その審査が3~4年待ちとなっている実態から、審査中に卒園してしまいます。一方、その間も障がい児には手厚く人員配置を行わなければなりません。
近年は、アスペルガー、ADHD、自閉症などの発達障がい児の情報も多く社会的関心も高くなったことからなったことから、統計的には約6.5%、30人に1~2名程の割合で発達障がい児がいると言われています。
さて、話は元に戻りますが、誰でも入園が出来るようになれば、今以上に園児が増えることになります。
そうなれば、家庭に親が居るにもかかわらず保育園を利用すれば、とも稼ぎ世帯や一人親世帯など、本当に保育が必要な子どもが弾き飛ばされてしまう事も懸念されますし、短時間保育の児童が、親の要望で通常保育時間になったりということが起こります。
保育士の配置基準を70年以上も見直すこと無く、更に園児が増え、今以上にフレキシブルな親の要求に応えるには、単に保育園に丸投げするのでは無く、厚労省や自治体が実態に合った保育計画と保育マニュアルを作成し、保育士の配置基準や労働環境を見直し、そして何より保育士の給与の向上が必要になってきます。
各自治体の首長や担当者は、現実に目を背けずに、早急に対応を検討していただきたいと思いますし、そのためには、現場の声を聞く機会を多く作って欲しいと思います。