個人情報は保護される?
- 2021年04月03日
デジタル改革関連法が衆議院内閣委員会を通過しました。
法案はデジタル社会形成基本法案の他、マイナンバーと預貯金口座の紐つけを進めるマイナンバー法改正案、さらに行政手続きの押印廃止などの関連法案の改正を含めた63本の束ね法案となっているにも関わらず、国会での審議時間が27時間とあまりにも短い、拙速な審議での結論でした。
このデジタル法案で一番心配されるのは個人情報の保護が明記されていないことで、野党は修正を求めましたが、修正は基本法案に知的・精神しょうがい者への配慮を付け加えただけで、採決にあたって採択された付帯決議では①デジタル化は国民の義務では無い②国民の思想・信条の情報は収集の手段としない③マイナンバーと預・貯金口座の紐付けを資産把握のために使わない④特定企業との癒着を招かないよう配慮する という事を求めました。この付帯決議に対して平井デジタル改革担当相は「趣旨を十分に尊重する」と述べましたが、付帯決議は尊重するだけで守るべき義務はありません。
これまでもそうであったように、実際に法律が施行された後、付帯決議が守られたことはほとんどありませんでした。与党にとって付帯決議は野党へのガス抜きであり、野党にとっては簡単に採択したわけでは無いというアリバイ作りに過ぎません。
ましてや、新たなデジタル庁は公務員だけではマンパワーが足りず、100人以上の人材を民間の企業から調達することになります。
公務員は法的に守秘義務が課せられますが、民間人に守秘義務はありません。
せいぜい、契約書に「知り得た情報は他に漏らすことがあってはならない。」という文言が書かれているだけでしょう。
結局、個人情報の保護は非常に脆弱なものになることが懸念されます。
国会の質疑においても、現行の個人情報保護法制下での行政機関の実績が質されましたが、個人情報保護委員会が住宅ローンを扱う住宅金融支援機構から民間の住信SBIネット銀行に118万人分のデーターが提供された事例があると答弁し、「個人情報であっても非識別加工されているから問題ない」との認識も示されましたが、この非識別加工をされた個人情報には、性別、年齢、職業、勤続年数、年収、借入残高、家族構成、郵便番号、取得した資格など23項目が含まれていたことが明らかになりました。
今のコンピューター技術は、居住地域が限定される郵便番号を含む23項目を入力すれば簡単に個人を特定するでしょう。
現行法制下であっても、このように大量の個人情報が本人の同意無しに民間企業に提供されています。
ましてや、自治体が自賄いできず、情報の匿名化の作業を民間に委託した場合、委託先で本当に個人情報が守られるのでしょうか?下請け、孫請けで中国に個人情報が漏洩したLINEの事件が端的に表しています。
米国政府による個人情報収集を告発した元米国中央情報局(CIA)のエドワード・スノーデン氏によると個人情報が首相やその直轄下にある内閣情報室に集積されて、本人が知らないうちに人物像を分析される危険性が有ると指摘していました。
既に、警察は捜査照会手続きで、本人の同意なく個人情報を任意に集めているとされています。指紋、DNA、顔認証などのデーターベースが犯罪抑止、公共の安全と秩序の維持という名目で蓄積、管理されており、それは国民の相当数に及んでいるようです。
憲法13条は幸福追求権に含まれる「自己情報コントロール権」を認めています。