半導体製造とPFAS(ブログ3300)
- 2023年08月05日
7月27日のブログで、半導体製造にPFAS(有機フッ素化合物)が使用されることによる汚染が心配だと掲載しました。
さて、昨年3月「ダークウォーター」という映画が上映され、私も見てきましたが、半導体製造のラピダスが国策企業として北海道に進出し、鈴木知事は大はしゃぎですが、単純に喜んでばかりでいられません。
映画は、有機フッ素化合物のPFAS・4700種類のうちPFOSという物質が招いた公害を取り上げています。
このあらすじを記したブログは、明日改めて掲載しますが、半導体製造と有機フッ素化合物との関係を少し触れたいと思います。
高度の半導体を量産するにはPFASが必要です。
ご存じのように半導体は現代社会が機能するために欠かせないもので、スマートフォンやコンピューターのモバイル通信技術、医療、人口知能(AI)、電気自動車、量子コンピューター等々、すなわち現在社会に関わる全てにとって半導体は重要な地位を占めていますし、未来社会にとっても必要不可欠なものです。
今、世界は半導体が不足しており、様々な分野で半導体の争奪戦が始まっています。
半導体を制する国は世界を制するとまで言われており、先進各国は競って高性能な半導体の開発・製造に血道を上げ、日本も負けじと熊本県では台湾の「TSMC」の日本工場を誘致し、北海道では国策で立ち上げた「ラピダス社」が千歳に進出します。
この半導体の製造の基礎的なICチップの基になるウェハ-の加工には約500種類の高度に専門化されたプロセスケミカルが必要とされ、こうしたプロセス、製造装置、設備には、撥水性の高く表面張力が低いPFASが欠かせません、言い換えればPFASが無ければ半導体製造プロセスや製造装置を組み立てる事が出来ません。
しかし、このPFASは発がん性が認められ、欧州では2025年に規制が強化され使用が制限されてしまいます。
また、世界のPFAS製造の80%のシェアーを持っている「3M社」が、25年までにPFASの製造から撤退することになりました。
3M社のベルギー工場では土壌汚染が広がり、PFASで汚染された全ての土壌を剥ぎ取る事を自治体と約束、この対処に膨大な支出が求められる事が大きな原因です。
これによって、半導体製造の重要部門であるドライエッチング用の冷媒が残り2年間で消滅してしまいます。
もう1社あるソルベイ社はシェアーの20%を占めていますが、これ以上の増産をする気は無いようです。それは、有機フッ素化合物を製造することは公害というリスクがつきまとうことになるからです。
北海道進出のラピダス社は、このPFASを使用して半導体を製造することになります。
PFASが手に入らない場合は自社で製造する事も考えているようですが、それは3M社と同じ事をしなければならないことを意味するのではないでしょうか。