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原子力施設視察

  • 2022年04月02日

 年度末の出張は、隣県である青森県に点在する(集中する)原子力施設の視察です。

 大間原発は、2008年着工2016年運転開始の予定でしたが、2011年の東日本大震災後に工事は休止を余儀なくされ、その後は現状の維持管理と運転員の研修を主体とし、さらに、新規制基準への対応として、耐震・耐津波、火山噴火、竜巻・森林火災、内部溢水、非常電源確保対策等を含む設計基準事故対策と、航空機衝突を含むテロ対策、特定重大事故等対処施設の設置、格納容器損傷防止、炉心損傷防止等の追加対策の検討を行っています。

 現在、炉心の入る原子炉建屋には、風雪防護のためにネット式の防護が張り巡らされていますが、その中に入るとむき出しになっている鉄骨は錆びに覆われ、その錆びが剥がれ落ちている場所も散見されており、工事再開となった場合は、原子炉建屋全体の検査を行い、取り替える必要が出た場合には対処する事になっているとのことですが、現場を見た限りでは、今後工事再開まで何年かかるかも知れず、これまで10数年も風雨に晒されていたことを考えると、ほぼ全体を取り替える必要が出てくるのでは無いかと思います。

 また、基礎工事部分から露出している鉄筋は、1本1本を覆い、全体をコンパネで囲い養生していますが、これも使い物になるのか定かではありません。

 まさしく、これらの事は現場に来て、見て、聴いて、初めて感じるものです。

 電源開発(Jパワー)としては、22年度には規制委員会の承認を得て工事を再開し、2028年の運転開始を目標にしているとのことですが、運転には函館市を含むUPZ圏内(30km圏内)の自治体避難計画が必須となります。しかし、函館市は非難計画を策定する考えは無く、さらに建設中止を求めて司法に提訴中ですから、運転のハードルはかなり高いものと思います。

 

 日本原燃の施設として青森県六ヶ所村の尾駮沼(おぶちぬま)周辺に位置する「原子燃料再処理施設」は、尾駮沼の北部と南部にそれぞれ2km×2km(4,000,000㎡=400㏊=4㎢)の連続した広大な2カ所(合計8㎢)を建設地として、北部地域に「ウラン濃縮工場」、「低レベル放射性廃棄物埋設センター」を、南部地域に「使用済燃料受入貯蔵施設」、「高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター(30年~50年間の中間貯蔵)」、「再処理工場」、「MOX燃料工場」の施設を配置しています。

 10数年前にも、この原子力サイクル施設の視察を申し入れた事がありますが、当時は受け入れて貰えず、門の前から遠目に施設の外観を伺うだけでしたが、今回は、既に稼働している「使用済核燃料受入貯蔵施設」、「高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター」、「低レベル放射性廃棄物埋設センター」は内部まで、他は工事中の施設なのでバスからの外観での見学することができました。

 視察前に六カ所原燃PRセンターでレクチャーを受け、その後、敷地内の各施設を見学となりましたが、国の核燃サイクルの先が見えず、「高速増殖炉・もんじゅ」は廃止が決定、フルMOXの大間原発は建設が凍結したままとなっており、国内では運転再開した10基のうち4基でしかプルサーマルを使用していないという現実を、この現場では感じ取ることが出来ませんでした。

 一度計画がスタートした国策の核燃サイクル事業は止めることが出来ず、今も約7,000人/1日の方々が建設作業などに従事しており、広大な土地に多額の費用を費やして、全く先の見えない幻を追っています。

 20年間に25回も工事が延期されて未だ完成せず、既に建設費は約3兆円にのぼり、仮に各施設が稼働した場合は、さらに16兆円以上の経費がかかることになるという。

 この視察では、動き出したら止まらない巨大プロジェクト、そして砂漠に水を撒くように資金を投入する国策という「怪物」を見たような気がします。


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