原爆資料館視察(ブログ3223)
- 2023年05月20日
G7サミットの首脳がヒロシマの原爆資料館を訪れ、館内を視察しました。
7年前、米国のオバマ大統領が視察した際には、資料館の入り口のロビーでの10分間だけでした。当時は、米国大統領として初めて原爆資料館を訪れる事になりましたが、それまでに71年の歳月がかかり、原爆を投下した米大統領がこの場所を訪れるには米国の国内事情も含めて相当に高いハードルだったのだと思います。
戦争を終結するために行ったと今でも自負する米国民の代表として、敵国の国民に想像を絶する被害をもたらしたその実相を目のあたりにするのは、心が大きく揺さぶられ正義とは何かというと言うことを突きつけられる可能性が有るからです。
今回は、岸田氏の地元で開催されるサミットであり、ウクライナの問題も大きく横たわっていることから、「世界の平和」また「核兵器のない世界」という事が注目される会議となります。
そして、昨日、G7出席の各国首脳は、岸田氏の案内で約40分の間、館内を視察し、原爆被害者とも面談しました。
視察の内容は非公開とし、その後の会見も用意されず各国首脳の感想を聞き出せませんでしたが、7ヶ国中3ヶ国が核保有国であり、自国で核保有の必要性を訴えている首脳にとって、その核兵器がどのように悲惨な兵器かということを知った後に、その感想を問われる記者会見を行うことは、核保有国のリーダーとしての立場と自身の中に存在する「人間の尊厳」との葛藤が起こることで、的確なコメントは出来ない事になるであろう事は想像に難くありません。したがって 今回のサミットにおける原爆資料館の視察には核保有国が難色を示し、直前まで調整が必要だったようです。
それでも視察が実現したのは、岸田氏にとって強いこだわりがあったからなのでしょう。
しかし、それでもなお会議において「核兵器による抑止力」を確認したということは、まさしく「本音と建て前」の使い分けを政治的に行える神経をお持ちの方々だと言うことになります。
多分、各国首脳は、帰国した後に記者団などから原爆資料館を訪れた感想を問われることになるでしょう。しかし、その事については「ノーコメント」を押し通すのではないかと思います。過去の悲惨な現実よりも、今、目の前にある国益に対処する事を優先するのがリーダーの務めと思っているからです。
しかし、米国の哲学者ジョージ・サンタナーヤ氏の言葉「過去から学ばない者は同じ過ちを起こす。」、そして元ドイツ大統領リヒャルト・フォン・ヴァインゼッカー氏の言葉である「過去に目を閉ざす者は、結局現在にも盲目となる。」という明言があります。
今回の資料館の視察は、各国の首脳にとって今後どのような意味を持ち続けるのか、それとも何の影響もないのであれば、広島サミットは歴史にも残らない程度の会議だと言うことになります。