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司法の独立

  • 2021年06月06日

 道新に「安保法違憲判決 判断を避けてはならぬ」と題する社説が掲載されていました。

 <集団的自衛権の行使を認めた「安全保障関連法」について、違憲だという訴訟が全国各地で行われているが、そのうち先月の札幌高裁、3月の釧路地裁を含めた全国11地裁、3高裁の判決は門前払いも同然であり、各裁判所は訴えを真摯に受け止めて憲法を巡る審理を深め、判断へと進むべきだ。>と訴えていました。

 「週刊金曜日5月21日号」に「裁判所を問う~これでいいのか裁判所」という特集が掲載されています。11ページにも及ぶ特集では、「司法の独立」が阻害されていることについて元裁判官や弁護士の方々からの意見が寄せられていました。

 抜粋して掲載します。

<園部逸夫元最高裁判事が新聞に寄稿した小論(朝日新聞2011年11月30日“耕論”によると、「最高裁には行政庁のいうことは基本的に正しいという感覚があり、その理屈として『行政庁の自由裁量』という逃げ道が用意され、その一つが『専門技術裁量』、すなわち、安全性について『看過しがたい過誤、欠落』がない限り、高度の専門知識を備えた行政庁の判断を尊重するというものであり、もう一つは『政治的裁量』で、例えば『経済活動に原発は必要』といった行政の政治的判断に委ねると言うものです。」>と、最高裁の現実を伝え、同じく<森野俊彦元福岡高裁部総括判事は、「下級裁判所裁判官も、そうした最高裁の動きに敏感で、国の政策の根本に関わる訴訟については及び腰、場合によっては思考停止が歴然の様相を呈しています。しかし、それは実は、ひとりの裁判官だけの責任では無いのです。かりにも、最高裁が時の政治権力におもねること無く毅然とし、憲法違反の判決を出した裁判官をほめ称えないにしろ寛容に遇するならば、もっといい判決がでることは間違いありません。」>と、今の司法の問題の根幹を示唆しています。

 さらに弁護士の立場から、<澤藤統一郎弁護士は、「今の司法が、憲法の想定する『憲法保障の中心機関』になるためには、行政や立法への違憲審査が躊躇無く果敢に行われなければならない。そのためには全ての裁判官が独立し、誰からの干渉も誰への忖度も無く、法と良心にのみ従った判決が可能で無ければならず、そのような裁判体を支える健全な司法制度の整備が必要だ。

 司法には二つの側面がある。裁判部門と、それを裏で支える司法行政部門=司法官僚だ。しかし、現実は『司法の独立』のために奉仕すべき行政部門が裁判部門を支配する逆転現象が起きており、裁判官は司法行政から独立し得ていない。

 すべての裁判官が昇任、昇格、昇級、任地等々の人事権を握られ、あえて良心を貫こうとした尊敬すべき裁判官は異動させられるなど重要事件から疎外される。下級審裁判官は人事権を梃子(テコ)とした司法官僚の統制から独立性を維持できず、最高裁は今や時の権力に迎合し、忖度する存在でしか無い。

 諸悪の根源となっている『司法官僚制』を克服するためには、①裁判官のキャリア制度を解体する②法曹一元化制度の採用、弁護士任官制度の充実③司法官僚の人事権を最高裁から取り上げるか縮小する④司法官僚のトップとなる最高裁判事、最高裁長官の人事の透明性確保のための裁判官任命諮問委員会再設⑤最高裁判事の国民審査を改革し、解任したい判事の意思表示をしやすくする。  などが具体策としてあげられる。」>と司法制度の改革無しに、裁判所は代わらないことを指摘しています。

 さて、①は、日本の現行制度では、司法資格取得後、弁護士や検察官など他の法律職に就くこと無く、始めから裁判官に任命され、その中でキャリアを養成していくのが普通であり、②他の法律職(弁護士=被告の代理人や訴訟代理人としての裁判経験、検察官=刑事事件において調査を行い、起訴・不起訴を判断し、公訴した場合求刑までの裁判経験)としての経験が豊富な者の中から裁判官を任命するという『弁護士任官制度』や『法曹一元化』が実現していない。③④は、森友事件の黒幕の一人である黒川東京高検検事長の定年を延長させても検事総長に就けて、検察による告訴をさせないように謀ろうとした安倍晋三氏のように、政府を忖度する最高裁判事や最高裁長官を任官させないため、そして、それらトップが下級裁判官の人事を意図的に行わせないため。⑤は、今は衆議院総選挙時に最高裁判事の国民審査が行われるが、解任したい場合は投票用紙に×を書き入れなければならず、それを、何も書き入れない場合でも解任とみなす等の改革などです。

 いま、地裁や高裁などでは、原発訴訟や同性婚問題などで、生存権や基本的人権を擁護する判決も出され、その判決を出した裁判官は「法と良心」そして裁判官の独立に立脚した判断を行ったと思いますが、その結果、司法官僚からの軋轢を覚悟しなければなりません。一日も早く法曹の一元化と裁判官の独立を実現するためにも、私たちが努力しなければ私たち自身と憲法は守れません。いまの裁判所、最高裁には任せられないのです。


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