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司法判断と政権(行政)

  • 2019年01月07日

 韓国との徴用工問題が泥沼化しそうな状況となっています。

 韓国の最高裁が出した判決、文在寅政権は三権分立を基本的に踏襲しており、最高裁が示した日本企業への差し押さえの執行という判断に対して、「日韓請求権問題」という政府(行政)間の協定を持ち込むことを控えています。

 一方、安倍政権下における日本の司法は、政権(行政)の意向を忖度し自立した判決を避けていますし、政権は司法の人事権(承認権)を陰に陽に利用しています。

 両国を比較すると民主国家の前提である三権分立が確立している国家と、全てが一人の人物に掌握されている国家の違いが如実に表れています。

 1965年の日韓請求権協定で、「個人の請求権問題も完全に最終的に解決されている」とするならば、1991年の参議院予算委員会での答弁は何だったのか。

 改めて、昨年11月19日にブログで掲載した内容を再掲します。

 

<・・・多くの方々は、「国と国、日本と韓国が協定を結んだのだから、元徴用工の個人賠償権は成立しない。韓国は何でこんなこと判決を許したのか」と思っている時に、18日付けの道新 〔異聞・風聞:「毅然と対応」その後は:編集委員 辻岡英信〕というコラムに重要な事実が述べられていました。

 “元慰安婦らの訴訟を30年近くにわたり手がけてきた福岡の弁護士・山本晴太さんは「首相は請求権協定を正確に理解していないのではないか」と批判する。

 1991年8月27日の参議院予算委員会で外務相の柳井俊二条約局長は、日韓請求権協定について「両国間の請求権の問題は最終かつ完全に解決した」と述べつつこう答弁した。「これは、日韓両国が国家として持っております外交保護権を相互に放棄したということでございます。従いまして、いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではございません」

 外交権とは、国民が受けた損害を国が相手国に請求する権利。国が持つこの請求権は互いに放棄したが、個人の請求権は残っているという意味だ。なぜこんな理屈なのか。以下は山本弁護士の解説・・・。

 日韓の協定に先立ち、連合国との間で結ばれたサンフランシスコ平和条約やソ連と国交を回復した日ソ共同宣言にも同様の請求権放棄条項が盛り込まれた。

 すると原爆の被害者やシベリア抑留被害者らは、日本政府に対し賠償を求める訴訟を起こした。請求権の消滅で米国やソ連に請求出来なくなったから、裁判の相手は請求権を放棄した日本政府-という理屈だ。

 火の粉が降りかかった政府はどうしたか。「放棄したのは外交保護権で、個人の請求権は残っている」。つまり米国やソ連を相手に個人で裁判を起こしなさいと追求をかわした。

 政府は相手国によって見解を変える訳にはいかないから、請求権問題を「完全かつ最終的に解決」した日韓請求権協定でも個人の請求権は消滅していない。これが柳井氏の答弁である。

 韓国側は当初、個人の請求権も放棄したと解釈していたが、柳井氏の答弁を受け、個人の請求権はあるという主張に転換した。韓国の主張の原型が日本政府の論理だとすれば、判決を国際法違反とする菅官房長官の批判は筋が通らない。

 日本国民に対しては個人の請求権が有ると言い、韓国には個人の請求権も含めて消滅したと主張するのであれば、日本政府は二枚舌と言われても仕方ないと山本氏は指摘する。 今後、個人の請求権があることを前提に韓国内で同様の訴訟が次々起こされるだろうし、これを押しとどめることは難しい。”

 さらに、週刊金曜日に掲載されていた川上詩朗弁護士の見解は、

 “2007年の最高裁での「西松建設中国人強制連行訴訟」の判決(西松判決)では、日本と中国との間の賠償関係等について、外国にいる自国民が損害を受けた際に本国がその国に対し代行手続きで救済を要求する「外交保護権」は放棄されたものの、被害者個人が賠償を請求する権利は「実体的に消滅させることまでを意味するものではない」との判断を示しました。西松判決は、裁判所での救済はできないが、個人の損害賠償請求権は消滅していないことから、裁判外で日本企業が賠償金を支払い、解決することは可能だということを示しました。その結果、西松建設は強制連行の事実を認めて謝罪し、2億5,000万円を拠出して基金を設立し、記念碑の建立、被害補償などを行いました。”

 このように日本の最高裁も、「個人の損害賠償請求権は消滅していない」と判断しています。

 最高裁の判決は前例踏襲主義ですが、その判断は重く、政府(行政)は新日鐵住金(旧日本製鉄)に対し、企業として賠償に応じる事は協定逸脱行為だと圧力をかけるべきではなく、過去に同様の問題で西松建設が行ったように、謝罪と賠償に応じるよう新日鐵住金に進言するのが国際的な対応ではないでしょうか。


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