名簿を見ていない
- 2020年10月10日
日本学術会議の推薦した会員候補のうち6人の任命を拒否した問題で、菅義偉氏が「6人を除外する前の名簿を見ていない」と発言しました。
であれば、見てもいないのに、6人の任命を拒否し、その理由を「総合的に、俯瞰的に判断した」と述べていたことになります。
これまでは、菅義偉氏が自ら105名の名簿を検討し、「総合的、俯瞰的に判断した」結果、6人を任命しなかったと国民は理解し、日本学術会議もそう受け止めたからこそその理由を菅義偉氏に問うているのですが、言い訳が通じなくなると、手のひら返しをしたように「選定には関与していない、上がってきたものをそのまま了解した。従って私の責任ではない。」と言い逃れをしているようです。
だとすれば、105名から99名に絞った張本人は誰なのでしょうか。
菅義偉氏に提出する重要書類を勝手に改竄したとするならば、早急に犯人捜しをして厳重に処分すべき事案です。
この問題について、早稲田大学の岡田正則教授が見解を出したことが「赤旗」に掲載されていましたので再掲します。
<日本学術会議が推薦した105人のリストを首相自身が見ていないと言うことが明らかになりました。その意味は、菅首相の「任命行為の違法性」がますます明確になった、ということです。総理大臣が推薦段階の105人の名簿を見ること無く任命行為を行った、ということであれば、法的に当然次のようになります。
①推薦段階の105人の名簿については「見ていない」、「自身が決裁する直前に会員交付のリストを見た段階で99人だった」ということは、日本学術会議からの推薦リストに基づかずの任命した、ということです。これは明らかに日本学術会議法7条2項「会員は第17条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」という規定に反する行為です。
②6人の名前を見ることなく決裁した、ということは、学術会議からの6人の推薦が内閣総理大臣に到達していなかった、ということですから、改めて6人について「推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」という行為を、内閣総理大臣は行わなければなりません。任命権者に推薦が到達していないのですから、任命拒否はあり得ないし、成し得ないことです。
③任命権を有する内閣総理大臣に推薦リストが到達する前に、何者かがリスト上の名前を105人から99人に削除した、ということであれば、総理大臣の任命権に対する重大な侵害であり、日本学術会議の選考に対する重大な侵害です。リストを改竄したものは虚偽公文書作成罪(刑法156条)の犯罪者です。
④推薦のあった6人を選ぶことなく、放置して「今回の任命について、変更することは考えていない」という態度をとることは、憲法15条に違反します。なぜなら、国民固有の権利である「公務員を選定する行為」を内閣総理大臣は放棄できないところ。その行為を行わないことは、憲法と法律によって命じられた職務上の義務に違反するからです。>
と論破しています。
6人が気に食わなかったとは言えないから「人事について個別の事には答えられない」とか「総合的、俯瞰的な判断をした」と官僚が書いた文書を読み上げましたが、誰もが納得せず、今度は「総合的とはどのようなことか、俯瞰的にとはどのような基準なのか」などと攻められ、ついに「名簿を見ていない」と責任逃れの言葉を吐いてしまいました。
それとて、次には岡田教授が指摘したことが問われます。
最後の手段は、森友問題のように官僚の誰かせいにして、泥を被った官僚を次の人事で昇格させるという安倍晋三内閣のお家芸を披露するだけです。
これこそ安倍政権を継承する菅政権らしい手法ではないでしょうか。