地に落ちた規制委
- 2020年12月05日
関西電力大飯原発3・4号機の耐震性を問う大阪地裁の判決が出され、設置許可取り消しという判断がなされました。
詳しくは各報道でご承知だと思いますが、その中で「東京新聞」は、2016年当時、規制委員長代理を務めていた地震学の権威、島崎邦彦東大名誉教授が大飯原発で想定される地震の揺れの評価において「不確かさを考慮すべき」と再考を促していましたが、規制委では受け入れてくれなかったことが掲載されていましたので、再掲します。
<島崎氏の試算では、関電が示した値の2倍近くとなり、これが採用されれば、原子炉建屋などにより厳しい耐震性が求められることになる。
◆「再計算は不適切」認めるも見直さず
規制委は、島崎氏の指摘を受けた再計算で「問題なし」とした。16年7月には島崎氏との面談で「再計算は不適切だった」と一転非を認めつつ、見直さないと突っぱねた。
田中俊一委員長(当時)は記者会見で、「島崎氏の言っていることはには根拠が無いというところまで、われわれも勉強した」と言い切った。
ところが同じ頃、規制委の審査姿勢に、地震動の計算方法をつくる政府の地震調査委員会内でも疑問視する声が上がっていたことが、本紙が情報公開請求で入手した議事録で判明している。16年4月の熊本地震後、複数の計算方法を併用するよう求めていた。にも関わらず、規制委は地震学者の警鐘を無視した。
◆「おかしさ、誰にでも分かる」
14年5月には福井地裁裁判長として大飯3・4号機の運転禁止を命じた樋口英明さん(68歳)は、今回の裁決を「地震規模を求める方法は大きな矛盾を抱えており、おかしさは誰にでも分かる。高裁でも維持されやすいと思う」と評価する。
地震動の想定は、設備に必要な耐震性を判断する根幹。
判決が確定すれば、規制委の審査はやり直しが必至となり、既に新基準適合済みの9原発16基は運転資格そのものを失いかねない。>と報道しています。
規制委自身が定めたガイドラインには「過去の地震規模のばらつきも考慮する必要がある。」と規定していながら、大飯原発の再稼働審査には、これらを何も検討せず、地震規模の値を上乗せすることもしないまま判断したことになります。
大阪地裁は、規制委自らに課した内規のルールさえ守っていなかったと指弾しました。
全くお話にもなりません。
島崎氏の意見を採り入れ再計算すれば関電の示した値の2倍近くとなり、原子炉建屋の耐震化に更なる巨費の投入が必要になるでしょう。
安倍氏や菅氏が「世界で最も厳しい安全基準で審査している」とし、原発や関連施設の安全について国民も信頼を置くべき規制委が、政府の地震調査委員会の言に左右され、又は忖度し、その責務を放棄してきたということは許されることではありません。
これで、規制委の信頼は地に落ちたということになり、これからは誰も信用することはないでしょう。