地方独立行政法人
- 2013年10月27日
町立松前病院の院長が、町及び町議会との意思疎通が十分でないとのことから辞意を表明している問題で、松前町長を経験した地元の衆議院議員が、函館新聞 の取材に対し、独立行政法人化(独法化)への移行の考えを示し、「独法化は経営の自由度が高く、移行することによって町や議会の関与を弱めるべき」との認 識を示したようです。
地方独立行政法人は、その法において「住民の生活、地域社会及び地域経済の安定等の公共上の見地からその地域において確実に実施される必要のある事務・事 業のうち、地方公共団体(地方自治体)自身が直接実施する必要はないものの、民間の主体にゆだねては確実な実施が確保できないおそれがあるものを効率的・ 効果的に行わせるため、地方公共団体が設立する法人」と定義し、病院については「公営企業型地方独立行政法人」として位置づけることができます。
しかし、新聞記事にあるように、町や議会の関与がかなり弱まるとは言うものの、必ずしも全ての裁量権が付与されるものではありません。
まず、町立病院を町の「企業会計」から「公営企業型地方独立行政法人(法人)」に移行するための条件があります。
その条件とは、この病院の事務・事業について、
①その廃止や民間譲渡の可能性について十分な検討を行うこと
②その上で、公の施設の指定管理者制度の活用と比較検討し、地方自治体が自ら実施するよりも地方独立行政法人を設立して行わせる方が効率的・効果的に行政サービスを提供出来ると判断される場合。
とあります。
従って、それらの検討を行い、移行の結論に至った場合は必ず議会の承認を経て、知事や総務大臣の認可を受けることになります。
その上で、設置のための「定款」の作成や変更は設置者(町長)が行い、議会の議決を受け、設置に関わる条例についても議会の議決が必要となります。
また、法人は「中期目標(3年間)」、「中期計画」を策定し目標による管理が行われますが、「中期目標」は設置者が策定し、議会の議決が必要ですし、「中期計画」は当該法人が策定し設置者に提出、その認可後、議会の議決が必要になります。
目標や計画についてはその進行状況などを評価する「評価委員会」を設置しなければなりませんが、この「評価委員会」は、「町長の補助機関(役場内の管理職 で構成)」として位置づけられており、その事業評価報告および法人からの事業報告は設置者に報告され、設置者から議会にも報告されます。
なぜこんなに設置者や議会の関与があるかといえば、独立採算制を前提としつつ財政措置として、設置者から運営費負担金が公布される、いわゆる税が投入されるからなのです。
職員の任用についても役員や職員は地方公務員の身分が与えられます。
公営企業である町立病院の独法化は、これらのことを十分に考慮し、判断しなければなりません。
地元衆議院議員が提言した独法化について、町長は「いろいろ勉強しなければならないこともある。今の段階では何とも言えない。」と述べたようですが、当然のことではないでしょうか。
地元衆議院議員が、当該の町立病院には独法化が必要との認識があったのであれば、1年前まで町長だったのですから、その時に移行していれば良かったはずです。
自分の時には手をつけず放置し、国政の立場から最大限の努力をするとのことですが、松前病院の維持のために何をなされるのか、その手腕に期待しましょう。