失敗の日米FTA交渉
- 2019年08月25日
日米貿易協定交渉が事実上の大枠合意をしました。
交渉の責任者で、直接米国通商代表部のライトハイザー氏と相対した茂木経済再生担当相は、「溝は埋まった。日本の農業を守る立場で交渉できた。」と満足げに語りましたが、実質はTPPを離脱した米国が2年遅れで日本に自国の主張を突きつけ、に日米FTAの発動後はTPP協定参加国と同様の関税率から始めるということになりました。
TPP参加国は、牛肉について当初38.5%から段階的に関税を削減することになっていますが、米国は最初からすでに参加している国と同じ26.6%から始まり、ここでも日米FTAは米国を特別扱いしています。
ここが交渉の「落としどころ」だったのかもしれませんが、一方、米国は日本の上をいくしたたかな交渉に成功しました。
当初のTPPでは、日本が米国の農産物輸入の関税を引き下げると同時に米国へ輸出する自動車の関税を撤廃することが交渉の大きな柱となっていました。
従って、日本ではTPPへの参加が検討されている中で、日本の農産物が自動車輸出の犠牲になるとの声が大きくなりましたが、政府は日本の農業について手厚く支援することで農業関係者を説得したはずです。
そこまでしながら米国はTPPに参加せず、二国間協定であるFTAを日本と結ぶ戦略に出ました。
今回の交渉の結果をみれば、農産物はTPP水準を超えることがなかったかもしれませんが、一方の条件であった自動車の関税撤廃については何も得ることが無いということになります。
日本は、農産物で関税の段階的削減を飲み込まされ、自動車の関税については見送られたという、まさしくウインウインの交渉結果ではなく、米国の一方的なウインで、日本はデフィート(敗北)だったということになります。
今後も、自動車の関税撤廃は何だかんだと言い訳されて先延ばしに、そして他の物品については米国の思惑通りということになると危惧します。