女川再稼働と自治体運営
- 2020年11月12日
宮城県の女川原発の再稼働に村井嘉浩知事が同意する考えを表明しました。
宮城県と石巻市、女川町の3者協議を行い、同意する結論に達したとのことです。
東日本大震災で被災した原発の再稼働として、その判断は、政府はもちろん全国の電気事業者、原発立地自治体なども高い関心を持って見守っていました。
村井知事は、「事前了解がなければ着手できない工事もある。このタイミングでないと支障があったのも事実。」と述べ、スケジュールありきでは無いとしながらも、再稼働を前提とした工事を優先し、住民や県内自治体との十分な協議を蔑ろにしてまで判断を急ぎました。
一方、UPZ(原発から30km)圏内の住民は約20万人にも及び、非難するための
主要道路は、11年の震災時には津波で冠水し、昨年の台風19号では同じく冠水や土砂崩れが相次ぎ、女川町の一部が約17時間にわたって孤立しました。
幹線道路である国道398号は、片側1車線で、曲がりくねった道路となっており、県は、人口の多い石巻市では人口の9割が避難先に到着するまで最長5日間以上かかると推計していますし、離島の住民約570人は船で石巻港や女川港に非難する計画となっていますが、石巻市は訓練さえも行っておらず、住民の多くは避難計画は「机上の空論」との意識が強く、不安を解消するものとはなっておりません。
それでもなお再稼働に舵を切るのは、大震災の津波で800人以上の犠牲者が出た後も、人口の流出に歯止めがかからず、原発を再稼働することによって経済へのてこ入れを図られるという淡い期待なのだろうと思います。
現に、東京新聞の取材に対し、2年前には「福島みたいになりてくねえ」と語っていた60代の漁師は、「金が落ちるならしょうがねえ」と諦めたように語ったことでした。
宮城県内では11万筆の住民投票を求める署名が集まりましたが、村井知事は住民投票を行う意思はありません。
これらの事は、私たちの近くでも起きました。
金のために最終処分場の「文献調査」に同意し、住民投票を求める署名に対し、その必要性を否定している寿都町長です。
また、今回の女川原発の再稼働は、女川町の商工会が町議会に再稼働を陳情したのがきっかけで、これも神恵内村と通じます。
県と石巻市、女川町は原発立地自治体として、これまでも原発交付金や関連税収の甘い蜜をなめてきましたが、原発休止中ということで交付金も減額されていました。再稼働によって、また過去のような蜜にありつけると踏んだのでしょう。
結局は、自らが人口流出や経済を再構築する努力をせずに、安易に原発マネーに依存するという悪しき体質から脱却できない過疎地の古参の方々が仕組んだことだと思います。
この点でも、神恵内村を思い起こさせます。
昨日の道議会決算特別委員会では、道内でも泊原発が計画された1984年の着工から道と泊村、隣接する神恵内村、岩内町、共和町が得た交付金、給付金、税収の合計が1,711億円にものぼる事が明らかになりました。
36年間、原発マネーに浸かってきたことが、他の自治体では当然のこととして行ってきた創意工夫の上での自治体運営という努力をすっかり忘れさせ、他力本願に依存してきたことが当たりまえとなったということなのでしょうか。
だとすれば非常に深刻です。首長や管理職、職員まで染みこんだ36年間の自治体運営への問題意識の無さは、人口減少にも表れ、この間の4町村の人口減少率は11.7%も進み、後志管内他町村の4.4%よりも大幅に多くなっています。
政府は、原発交付金などでは無く、これらに地域が自立できるように企業の誘致や政府機関の移転設置など、別の地域貢献策を進めるべきではないかと思います。