審議会無視の非礼
- 2019年06月12日
もはや、なりふり構わない火消しとなっています。
麻生太郞氏が、「表現が不適切だった」と報告書を一蹴、果ては「この報告書を受け取らない」とまで言うと、管 義偉氏まで同じように受け取らないと記者会見で話しました。
そもそも、金融審議会は財務大臣の諮問機関であり、財務大臣から諮問された内容を有識者である審議会委員のメンバーが審議、具体的かつ個別の内容については審議会に専門家によるワーキンググループ(WG)を設置して協議を行い、その報告書を親委員会である審議会に提出をする、審議会はその報告書を尊重し、審議会として大臣に答申をする。
というのが、行政の流れです。
行政に関わる重要な課題については、単に省庁や自治体という行政執行側が判断するのではなく、民間の有識者などからなる審議会に諮問して様々な検討を加えもらい、客観的な立場での答申を行政側が受け、その答申を尊重して様々な制度に反映するものです。
今回も、金融審議会に「高齢社会における資産形成・管理」について諮問し、市場ワーキンググループ委員21名が12回にわたり協議を行い検討してきた結果を56ページの報告書にまとめたものです。
この流れで判るように、そもそも麻生太郞氏は大臣として有識者に、報告書の提出を依頼している立場であるのも関わらず、その報告書の内容が気に食わないから受け取らないとは、審議会委員並びのWGメンバーに対して大変失礼な事をしていることになります。
それでなくても、金融庁は5月22日に提出されていた報告書を6月3日の時点で書き換えていた事実まで明らかになっています。
<変更された報告書>
◇公的年金の水準が当面低下することが見込まれていることや退職金給付額の減少により
↓
公的年金とともに老後生活を支えてきた退職金給付額は近年減少してきている
◇公的年金だけでは望む生活水準に届かないリスク(項目の見出し)
↓
公的年金の受給に加えた生活水準を上げるための行動(項目の見出し)
◇少子高齢化により働く世代が中長期的に縮小していく以上、年金の給付水準が今までと
同等のものであると期待することは難しい。今後は公的年金だけでは満足な生活水準に
届かない可能性がある
↓
◇少子高齢化により働く世代が中長期的に縮小していくことを踏まえて、年金制度の持続
可能性を担保するためにマクロ経済スライドによる給付水準の調整が進められることに
なっている
今でも森友・加計の時と同じようなことを金融庁では行っているようです。
さすが麻生太郞氏の率いる財務省の管轄、体質は何も変わっておりません。
政府がこの報告書を受け取らなくても、報告書の計算が変わる訳ではありませんし、年金が制度として持続可能でも普通の生活が維持できる年金額が支給されずに不足する事実は変わりません。
安倍晋三氏は、現役時代の手取り収入額に対する受給開始時の年金額の割合を示す「所得代替率50%」ということを今回の決算委員会でも発言をしましたが、そもそも平成28年にこの計算についても歪な計算であることを長妻元厚労相から質問趣意書で指摘された塩崎厚労相(当時)は「試算について役割を果たしていないこともあり得る」と認めています。
「老後は心配ない」と胸を叩くのであれば、報告書に替わる代替え案をきっちり示し、国民に分かりやすく説明すべきではないでしょうか。
それが出来ないのであれば、「やっぱりそうか」ということになります。