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徴用工問題と日本

  • 2019年07月06日

 昨日は安倍晋三氏の危険な猿真似というブログを書かせていただきましたが、韓国との関係悪化の原因とされています日韓請求権協定に関わる「徴用工問題」について、第二次世界大戦終了後に一般国民の戦争被害に関する請求に関しての国会での答弁、そして日本の最高裁での判決について、18年11月19日のブログ<韓国徴用工判決>で、識者や弁護士の見解などを掲載しましたので、改めてそのブログのエキス部分を再掲します。

 

 ●安倍晋三氏は、「日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決した問題で、韓国に対して毅然として対応していく」と述べました。

 多くの方々は、「国と国、日本と韓国が協定を結んだのだから、元徴用工の個人賠償権は成立しない。韓国は何でこんな判決を許したのか」と感じていると思いますが、11月18日付けの道新<異聞・風聞:「毅然と対応」その後は:編集委員 辻岡英信>というコラムに重要な事実が述べられていましたので抜粋して掲載します。

 <元慰安婦らの訴訟を30年近くにわたり手がけてきた福岡の弁護士・山本晴太さんは「首相は請求権協定を正確に理解していないのではないか」と批判する。

 1991年8月27日の参議院予算委員会で外務相の柳井俊二条約局長は、日韓請求権協定について「両国間の請求権の問題は最終かつ完全に解決した」と述べつつ、こう答弁した。「これは、日韓両国が国家として持っております外交保護権を相互に放棄したということでございます。従いまして、いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではございません」

 外交保護権とは、国民が受けた損害を国が相手国に請求する権利。国が持つこの請求権は互いに放棄したが、個人の請求権は残っているという意味だ。なぜこんな理屈なのか。以下は山本弁護士の解説・・・。

 日韓の協定に先立ち、連合国との間で結ばれたサンフランシスコ平和条約やソ連と国交を回復した日ソ共同宣言にも同様の請求権放棄条項が盛り込まれた。

 すると原爆の被害者やシベリア抑留被害者らは、日本政府に対し賠償を求める訴訟を起こした。請求権の消滅で米国やソ連に請求出来なくなったから、裁判の相手は請求権を放棄した日本政府-という理屈だ。

 火の粉が降りかかった政府はどうしたか。「放棄したのは外交保護権で、個人の請求権は残っている」。つまり米国やソ連を相手に個人で裁判を起こしなさいと追求をかわした。

 政府は相手国によって見解を変える訳にはいかないから、請求権問題を「完全かつ最終的に解決」した日韓請求権協定でも個人の請求権は消滅していない。これが柳井氏の答弁である。

 韓国側は当初、個人の請求権も放棄したと解釈していたが、柳井氏の答弁を受け、個人の請求権はあるという主張に転換した。韓国の主張の原型が日本政府の論理だとすれば、判決を国際法違反とする菅官房長官の批判は筋が通らない。

 日本国民に対しては個人の請求権が有ると言い、韓国には個人の請求権も含めて消滅したと主張するのであれば、日本政府は二枚舌と言われても仕方ないと山本氏は指摘する。 今後、個人の請求権があることを前提に韓国内で同様の訴訟が次々起こされるだろうし、これを押しとどめることは難しい。>

 

 さらに、週刊金曜日18年11月16日号に掲載されていた「元徴用工韓国最高裁(大法院)判決について、川上詩朗弁護士に聞く」の記事には、

 <2007年の最高裁での「西松建設中国人強制連行訴訟」の判決(西松判決)では、日本と中国との間の賠償関係等について、外国にいる自国民が損害を受けた際に本国がその国に対し代行手続きで救済を要求する「外交保護権」は放棄されたものの、被害者個人が賠償を請求する権利は「実体的に消滅させることまでを意味するものではない」との判断を示しました。西松判決は、裁判所での救済はできないが、個人の損害賠償請求権は消滅していないことから、裁判外で日本企業が賠償金を支払い、解決することは可能だということを示しました。その結果、西松建設は強制連行の事実を認めて謝罪し、2億5,000万円を拠出して基金を設立し、記念碑の建立、被害補償などを行いました。>

 と述べています。

 日本の優秀な官僚が、ましてや最高裁における西松判決を法務省が知らないわけでも無いと思います。

 それとも、日本は韓国(徴用工訴訟)と中国(西松判決)で対応を変えるのか。

 今回の政府の対応は日本の最高裁判決を否定することになり、併せて韓国の大法院判決をも否定するという三権分立を蔑ろにすることにつながります。安倍晋三氏自ら主張する「法治国家」とは笑止千万、国際的な笑いものになるでしょう。

 ASEANでは、文在寅大統領と握手もしなかったとのことですが、実に馬鹿げた総理大臣ではないでしょうか。●

 

 というものです。

 今回の徴用工問題の企業は新日鉄住金(当時の日本製鉄)ですが、政府は当初から企業側が賠償判断をしないように圧力をかけ、あくまでも日韓請求権協定で解決しているとの態度を崩しません。

 今、韓国では同様の賠償請求訴訟は三菱重工業やIHI、不二越など70社を超えていますが、自民党は支援してくれる大企業への影響を考慮したのでしょうか。

 マスコミの対応は、先に掲載した北海道新聞や週刊金曜日などの一部以外、そのほとんどが韓国に問題があるという報道ばかりです。

 当時の大阪高裁では、「徴用工は、日本製鉄の監視下におかれて、労務からの離脱(便所等)もままならず、食事も十分に与えられず、劣悪な住環境の下で、過酷で危険極まりない作業に、自由を奪われた状態で半ば強制的に相当期間従事させられた」という事実を認定し、「違法」と断じました。

 皆さんは、この徴用工問題での日本の対応をどのように受け止めるでしょうか。


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