意見を持たず気分で支持
- 2020年10月07日
安倍晋三氏が2回目の政権放り投げる直近の世論調査は36%(各報道機関の調査で若干の誤差はある)の支持率で、それが菅義偉氏に政権が代わった途端に自民党歴代3位となる74%(各報道機関の調査で若干の誤差はある)の高支持率となりました。
ご祝儀相場にしても倍の支持率となったことに、日本の国民の心変わりは一体なんだろうか、新政権に何を期待しているのだろうかと不思議に思っていましたが、その謎が解けた様なコラムがありました。
週間金曜日に掲載された東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授・中島岳志教授が寄稿したものを掲載します。
<菅内閣の支持率は60%を超える高い水準でスタートした。思い出しておきたい。安倍内閣末期には、支持率が30%を切り、危険水域に入ったと言われた。コロナ対策は支持されず、アベノマスクは酷評された。検察人事をめぐってはこれに抗議するツイッターデモが起き、検察庁法改正案は廃案に追い込まれた。GO TOキャンペーンは、コロナ対策と逆行するとして批判を浴びた。
このほとんどの政策に関わったのが菅官房長官(当時)である。そして「アベのまま内閣」=菅政権の発足。合理的に考えて、支持率がアップする要素はほとんどないはずだ。 にもかかわらず、支持率が2倍に跳ね上がった。約3,000万人もの人が、非支持から支持へと反転したことになる。
私には確信がある。私は安倍内閣に対しても菅内閣に対しても、批判的である。しかし、安倍内閣を支持し、引き続き菅内閣を支持している人を敵視していない。それは一つのオピニオン(意見)であり、見解の相違が存在するのは、自由主義社会では当然のことであるからだ。
一方、菅内閣になった途端、非支持から支持へと反転した約3,000万人は、センチメント(気分)によって動いている。オピニオンに対しては議論が成り立つが、センチメントには議論が成り立たない。
日本人はかつて「輿論」と「世論」を区別した。「輿論」は「パブリック・オピニオン」、「世論」は「ポピュラー・センチメント」。「輿論」が尊ばれ、「世論」は白眼視された。
今や日本は「世論」に支配されている。菅内閣は3ヶ月ほどで、一気に支持率を下げる可能性が高いが、私はこの動向に危うさを感じる。「世論」の動きを注視したい。> と、雰囲気に流されやすい国民の思考を分析しています。
菅政権が9月16日に発足してから3週間が経ちましたが、以前として臨時国会は開かれず、所信表明演説も行わないまま内政・外交を行っています。
この国をどのような国にするのか、そのためにどんな政策を実行するのか、安倍政権の継承とはどんなことか、経済政策は、外交の基本は、冬に向かってのコロナ対策は、等々何も語っていませんし、唐突な「日本学術会議」への人事関与についてもその真意を明らかにしていません。
それなのに、有権者の多くが自分の意見を持たずに気分に流されるということは、為政者にとってこれほど操りやすい国民はいないと言うことになります。
ちょっとした政策を実現して飴を舐めさせれば、又は、これからはこうなるというニンジンをぶら下げれば、国民の気分は良くなり支持が得られる。
この手法が安倍政権のアベノミクス、トリクルダウン、デフレ脱却、物価上昇率2%、拉致問題解決、北方領土問題進展、1億総活躍社会、地方創生、女性活躍・女性が輝く社会、待機児ゼロ、非正規という言葉をなくす、介護離職ゼロ、働き方改革等々で、期待感だけ持たせて何も実現しなかった安倍政権の「やっている感・政治」だったのではないでしょうか。
このやっている感・政治を継承する菅義偉氏。
多分、就任1ヶ月には報道機関の世論(?)調査が行われる事だろうと思いますが、その時の支持率はどうなっているのか、また、臨時国会でのやりとりを国民はどう評価するのか、私も注視したいと思います。