投資所得倍増計画
- 2022年05月31日
昨年、岸田氏が総裁選で公約とした「令和の所得倍増計画」が、いつの間にか「資産所得倍増計画」に衣替えしてしまいました。
国税庁による公務を除いた「民間給与実態報告書」によれば、民間企業で働く人の平均給与(年収)は433万1,000円で2年連続の減少、また、平均ボーナスは64万6,000円、これも対前年比で8.1%の減少となっています。
ちなみに、財務省の法人企業統計ではこの20年間の平均給与が約370万円(年収)で、全く増えていない、と報告しています。
今朝の「羽鳥慎一・モーニングショー」では、この30年間でたったの5%程度の所得増と放送していましたが、いづれにしても、所得がまったく増えていないということだけは、統計上も共通の認識となっています。
そしてブログで何度も申し上げてきましたが、これはOECD32ヶ国でも希有な現象で、ついには韓国にも抜かれてしまい最下位という不名誉な称号が与えられました。
さすがに岸田氏も何とかしなければと思いついたのが、昭和の岸政権が政策として打ち出した「所得倍増計画」の焼き直し計画でした。
この所得倍増計画の最初で最後の施策が、保育職の収入を3%月額9,000円の賃上げと、介護職の収入を1%月額4,000円の賃上げですが、何と、保育職の3%は段階的に1%ずつ増額するという、せこい内容で、それ以外の民間労働者の所得については、これまで同様に企業にお願いするという官製春闘の継続となっています。
つまり、所得増は神頼みならぬ企業頼みという、政策とは言えない情けない内容です。
そして出てきたのが、「資産所得倍増計画」です。
つまり、政府は何の具体的な方策も持ち合わせていないので、「個人の貯蓄などを資産運用に回して、個人の責任で所得を増やしましょう。」という、しょうも無い内容にすり替えてしまいました。
その根底にあるのは、日本国内の個人貯蓄は2,000兆円もあるのだから、これを投資に回せば、「企業良し、投資家良し、経済成長良し」という1石3鳥の効果となるという皮算用です。
しかし、先ほどの統計で判るように一般の労働者に株を購入する余裕は有りません。
日本で株を所有している人は2020年度末では人口の11.1%で、ある程度の資産を保有する俗に言う富裕層が中心であり、残り9割の国民は、岸田氏の言う資産所得倍増計画とはまったく無縁であります。
そして、給与が上がらない一方、教育費、住居費、食料費等が上昇しているために、30年前に比較して実質賃金は約10%低下しています。つまり、生活レベルの余裕が無くなり貧しくなっているのが現状です。
岸田氏のやることは、5%の賃上げの効果を実感できる消費税の5%減税を即刻実現し、その補填を、約480兆円の内部留保を有している企業の法人税増税や、株式投資益に係る金融所得課税(税逃れの裏技もあるとか)などの増税、を引き当てれば、国民所得の格差も少しは解消できるのではないでしょうか。