政府の指示権(ブログ3571)
- 2024年05月12日
地方自治体に対する政府の指示権を拡大しようと、地方自治法の改正を目論む政府が改正案を国会に提出し、その審議が始まりました。
コロナ禍における都道府県の取組に差異が生じ、一貫した対応が出来なかった事に問題があったというのが政府の理由のようですが、果たしてそうだったでしょうか。
各都道府県によって感染状況に違いがあり、高齢者施設がクラスターになってしまう事が多い自治体や、学校など子どもの感染率が高い地域、域内移動制限の違いや三密への認識の差など、それぞれの状況に応じた対応を各都道府県は行ってきました。
一方、政府は何でもかんでも一律対応を追求し、飲食店の休業や営業自粛についても後手後手だったのは政府の方だったと思います。そして、感染症委員会と厚労相の不一致、経産相、デジタル担当相などが思いつきで勝手に発信するなど、混迷を極めたのは政府では無かったのではないでしょうか。コロナ禍の検証の1丁目1番地が政府の無策と自治体への口出しだったのは、各自治体首長の共通した感想だと思います。
それを棚に上げ、感染症などで指示権が必要など、改正の理由にもなっていません。
結局は、自民党の憲法改正案にある「緊急事態条項」を個別の法の中に盛り込んで、改正の基盤を作る事にあるようです。
あえて地方自治法を変えようとするのは、地方自治法第245条の2に「普通地方公共団体は、その事務の処理に関し、法律又はこれに基づく政令によらなければ、普通地方公共団体に対する国または都道府県の関与を受け、又は要する事とされることはない。」と記されていることから、この条文が政府にとっては邪魔な様です。
しかしこの条文は、国と地方は対等な立場であるという、地方自治法の根幹に関わるものであり、「地方自治体の事務は国や都道府県の関与は受けない。」つまり、緊急事態においても、住民に一番身近な基礎自治体がその対処を中心的に担い、国や都道府県はその支援を最大限に行うということである事を変更し、国に指示権を集中するということは、閣議で緊急事態と判断すれば、全ての事務が政府直轄と言うことになり、従わなければ罰則が科せられるという、政府が目論む中央集権を着々と推進する改正となります。
危険な法改正では無いでしょうか。