背景

ブログ月別アーカイブ

ブログ

>>前のページへ戻る

敵基地攻撃能力①

  • 2021年12月20日

 17日の予算委員会において、「敵基地攻撃」とはどのような作戦なのかと共産党の小池書記局長が質問したことに対し、岸信夫防衛相は、「①他国の領域においてミサイルの発射機や基地の正確な位置を把握する②防空用レーダーや対空ミサイルを攻撃して無力化し、制空権を一時的に確保する③その上でミサイルの発射機や基地を破壊し、発射能力を無力化する④効果を把握した上で更なる攻撃を行う。 という一連のオペレーションであるが、これは1例であり、これに限られるものではない。」と答えています。

 これに対し小池氏は、「1発ミサイルを撃つ話ではない。相手国の領域まで乗り込んでミサイル基地をしらみつぶしに攻撃し、制空権を確保して地下施設も含めた大攻撃。まさに全面戦争であり、憲法9条で認められるわけがない。」と非難しました。

 新聞赤旗では、<こうしたオペレーションに必要な装備体系は何か。①に対しては▼敵基地に関する正確な情報収集・監視・偵察能力=監視衛星や無人偵察機。②に対しては▼敵の防空レーダー、対空ミサイル無力化能力=電子戦機や対地攻撃機など。③に対しては▼ミサイル基地など破壊のための航空機の侵入能力=ステルス戦闘機、爆撃機。④に対しては▼遠隔地から攻撃する長距離巡航ミサイルなどが考えられる。>と考察しています。

 そのために、防衛省ではこの度の補正予算でも7,700億円の予算を要求し、来年度の22年度予算も過去最高額を要求しています。

 すでに「いずも」型護衛艦に改修を視野に垂直離着陸が可能なF35Bステルス戦闘機の配備や長距離巡航型のミサイルに加え、中国も配備した「極超音速滑空弾」や遠隔地にいる敵に電波攻撃をかける「スタンドオフ電子戦機」の研究・開発も進めていますし、無人偵察機「グローバルホーク」も近く配備予定とされています。

 これまでの歴代防衛相は「攻撃を受けていなくても相手国が武力行使に『着手』していれば、相手の基地を攻撃することは自衛権の範囲で可能だ。」、「『着手』について、その時点での国際情勢、相手方の明示された意図、攻撃の手段、対応などによるものであり、個別具体的な状況に即して判断する。」と話すだけで、具体的な判断基準を示してはおりません。

 しからば、どのようにその情報を得るのでしょうか。

 現在、日韓政府の対立により韓国とは危機管理の情報共有がスムーズではありませんから、米国が頼りと言うことになります。残念ながら今の日本が自国で情報を得るにはかなりのハードルがまだまだありそうです。

 軍事ジャーナリストの田岡俊次氏は、<急増する装備費の大半が敵基地攻撃能力に向けられそうであり、自衛隊の将官の中にも「偵察衛星」で北朝鮮が弾道ミサイルを発射しようとする状況が判ると思っている人がいるが、偵察衛星は地上約2万7,000kmで南北方向に地球を90分で周回し、毎日同じ時刻に同地点上空を通過することから目標地点を撮影できるのは1日1分程度、また、「静止衛星」は赤道約3万6,000km、地球の直径の約3倍の高度で周回し、その高度では地球の自転の速度と同調するため地表からは止まって見えるが、当然その距離ではミサイルが見えるわけもなく、発射の際に出る大量の赤外線を感知できるだけだから、ミサイル発車前に情報を知ることは適わない。無人偵察機は領空侵犯になるから撃墜される。>と、懐疑的です。

 北朝鮮は、ミサイルを発射装置ごと列車に積んで移動が可能ですし、山の中のトンネルに隠しておき、攻撃時だけ谷側のトンネルから出て発車する実験も行っていることから、基地など無くどこから発車するかも検討がつきません。

 また、中国の国内基地についての情報を、米国や日本がどの程度把握しているのかも定かではありません。

 したがって、ミサイル発射を事前に察知する事は可能性として非常に低いことになります。高い確度でその事を知ることが出来るのであれば、北朝鮮から日本海への発射実験をいつも着水後に確認するということはあり得ません。

 どうやら、事前に察知するということは、今の情報戦の中においても机上の空論ということなのかも知れません。


Copyright(C)高橋とおる後援会 All Rights Reserved.