期待の持てない外交
- 2021年01月22日
菅氏は近隣外交をどのようなポリシーを持って進めていくのかが分かりません。
安倍外交を継続することとしていていますが、菅氏本人は、安倍外交をどのように評価をしているのでしょうか。
安倍氏と二人三脚で進めてきたのですから、辛い評価は自ら天に唾するものとなりますが、北朝鮮、中国、ロシア、韓国、どの国とも外交が停滞しており前には進んでいません。
施政方針演説では、「政権の最重要問題である拉致問題については、私自らが先頭に立ち米国を含む関係国と緊密に連携しつつ、全力を尽くします。金正恩委員長(既に総書記へ就任しているが、まだ委員長と呼んでいる)と条件を付けずに直接向き合う決意に変わりなく、日朝平壌宣言に基づき、拉致、各、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を生産して、国交正常化を図ります。」と述べていましたが、米国は大統領が交代し、新たな米朝関係がどのようになるのか分からないにも関わらず、相変わらずの米国頼みとなっていますし、『関係国と緊密に連携し』と言っても北朝鮮問題解決のための関係6ヶ国協議で日本は唯一蚊帳の外にされ、他の国からも相手にされていませんし、北朝鮮との交渉窓口も閉ざされたままとなっています。何より安倍氏の8年間でも拉致問題は1mmも動いていないのです。
また、中国との関係については「安定した日中関係は、両国のみならず、地域、国際社会のためにも重要です。両国には様々な懸案が存在しますが、ハイレベルの機会も活用しつつ、主張すべきは主張し、具体的な行動を強く求めていきます。その上で、共通の諸課題の解決に向けて連携して参ります。」と述べましたが、現実的には日中関係は米中関係に引きづられて行くことは明らかで、貿易でも日本は相手にされていませんが、それ以上に米軍と連携しながら仮想敵国を中国としつつ防衛装備を強化、尖閣問題、中国の軍事戦略である第1列島線で対峙していることを考えれば、今までのようなやり方を継続していく限り安定した日中関係の改善はかなり難しいのではないかと思います。
ロシアとの懸案である北方領土問題については「北方領土問題を次世代に先送りせず、終止符を打たねばなりません。2018年のシンガポールでの首脳会談のやりとりは引き継いでおり、これまでの両国間の諸合意を踏まえて交渉を進めます。」と述べていますが、ウラジミール・シンゾーと呼び合って、27回にも及んだ日ロ首脳会談でも領土問題は前に進まず、4島返還から2島返還に方向転換し、総額3,000億円を拠出する8項目の協力プランは、観光促進と廃棄物処理が頭出ししただけで、これも今のところ凍結状態です。その間に、プーチン氏は憲法を改正し領土割譲を禁止してしまいました。
そして、領土問題と日米安保条約を天秤にかけさせ、日本をデッドロック状態にしてしまいましたが、菅氏はカードも持たないまま、壊れたテープレコーダー状態で、相手にされないままです。
韓国との外交でも「韓国は重要な隣国です。現在、両国の関係は非常に厳しい状況にあります。健全な関係に戻すためにも、我が国の一貫した立場に基づき、韓国側に適切な対応を強く求めて行きます。」と述べていますが、この状況をもたらしたのは歴史修正主義と戦争責任の回避に基づく日本側の責任だということから目を背けています。
この間、徴用工問題に端を発し、韓国をホワイト国から除外し貿易で経済制裁を加えましたし、それ以前から安倍氏は韓国が嫌いなようで、事ある毎に韓国を非難、とりわけ村山談話や河野談話を否定し、慰安婦問題を敵視して関係改善には後ろ向きであるにも関わらず、安倍氏後継の菅氏も、今の状況を作ったのは韓国だと言わんばかりです。
安倍政権の負の外交遺産を踏襲する菅氏に、近隣外交のビジョンは全くありません。従って総理就任後も近隣のどこに国にも訪問することが出来ず、ベトナムとカンボジアの2国の訪問でお茶を濁しました。
米国でバイデン大統領が誕生しましたが、トランプべったりだった日本がバイデン氏とどのようなスタンスで話し合うのかさえも、描き切れていないのだと思います。
果たして、戦略無き菅外交は今後どうなっていくのでしょうか。