東電経営陣に地裁判決
- 2022年07月14日
東電フクシマ原発事故に関わり、東電経営陣5人に対して会社に損害を与えたとして、総額22兆円を賠償するよう求めた「株主代表訴訟」の判決で、東京地裁は経営陣4人に対し13兆3,210億円の支払いを命じました。
原告(株主)側は、<最大15.7mの津波がフクシマ第1原発を襲うという政府機関の「長期評価」の試算があり、津波による事故発生は予見できた。会社は長期評価を信頼せず「土木学会」に試算結果の検討を依頼、津波対策を先送りした。>と主張。
被告(経営陣)側は、<試算の根拠となった政府機関の地震予測は信頼性を欠いており、土木学会への検討依頼は合理的判断だった。>と、真っ向から反論。
東京地裁の判決は、<政府機関の「長期評価」は科学的に信頼性があり、津波の襲来は予測できた。対策を放置した経営陣(武藤副社長)の判断は著しく不合理だった。旧経営陣は最低限の津波対策を速やかに実施するよう指示する注意義務を怠った。>と判断し、5人中4人に13兆3,210億円を、損害を被った会社に支払うよう命じました。
フクシマ原発に関わる訴訟は、この他にも争われていますが、6月17日に出された国の責任を問う最高裁判決は、<長期評価に基づき国が東電に命じても、実際の津波は想定より大きく、事故を防ぐことは出来なかった。>として国に賠償責任は無い。としました。 東京地裁の判決は、さらに、<主要建屋や重要機器室に対する浸水対策工事をしていれば、津波による重大事故を避けられた可能性が十分にあった。>ことも津波対策の一つとして重要視しています。
フクシマの事故は、地震により通常電源が消失し、さらに津波によって非常電源装置が浸水したために原子炉への冷却水が循環せずメルトダウンが起きたものです。
従って、東京地裁の判決は十分に妥当性のあるものだと思います。
岸田氏は電力の逼迫から、規制委の審査に合格し地元同意を得ている原発の再稼働に大きくシフトしていますが、規制委の審査合格が安全だとは言い切れないと規制委自身も認めています。
さらに、事故が起きた場合、経営陣が多額の賠償金を求められるという今回の判決は、再稼働の経営陣判断に大きな影響を与えるものと思います。
果たして岸田氏の吹く「笛」に対して、素直に「踊る」原発事業者がどれだけいるでしょうか。