正しい選択?
- 2022年06月26日
今日の道新のコラム「卓上四季」に、<意思決定をする際に人は損失を避ける意識が働く、その場合、今まで行ってきた方法が自分にとって大きなリスクだと感じなければ、あえて新しいことに挑戦しないという「現状維持バイアス(偏向)」が働く傾向にある。参院選が本格化している中で、今の暮らしは自分にとって心地よいのか否か、現状維持バイアスは選択肢が多いと一層働くとの分析がある。バイアスを克服して客観的判断をするには、データーを用いた分析が有効だ。野党が(与党以上に)より根拠のある政策を示せるかが、選挙戦を左右しよう。>という内容が掲載されていました。
そして、週刊金曜日に掲載された思想家の内田樹「凱風快晴ときどき曇り」のコラム“選挙で正しい選択とは”では、<為政者が明らかに自分たちに不利益をもたらす政策を実施している時に、それにもかかわらず、その為政者を支持する人達がいる。彼らはいったい何を考えているのだろう。
自分達を苦しめる政党を支持している人たちは、その事実を多分(ぼんやりとではあれ)理解しているのだろうという気がする。しかし、現実には相当数の有権者が、それをわかった上で、自分達をさらに苦しめる政党に投票している。そのような倒錯が国民的規模で行われていると考えないと、現代日本のあるいは中国やロシアの政治状況は説明が難しいだろう。
アメリカのダートマス大学のチームが行った日本における政党支持と政策支持のずれについての研究では、2019年の衆議院選挙の分析で、“自民党の勝ったこの選挙では、自民党の政策は他党の政策に比べて高い支持は得ていない。自民党は原発・エネルギー政策では最下位、経済政策とジェンダー政策はワースト2位となっている。では、なぜ政策が支持されないにもかかわらず自民党は勝ち続けるのか。そこで、研究チームは政党名を示さないで政策の良否をはんだんしてもらった場合と、政党名を示した場合を比較したら驚くべき結果が示された。
自民党以外の政党の政策であっても、「自民党の政策」というラベルを貼ると支持率が跳ね上がるのである。共産党の外交安保政策は非常に支持率が低いが、これも「自民党の政策」として提示されれば一気の肯定的に評価される。つまり、有権者はどの政党がどういう政策を掲げているかを投票行動の基準にしているのではなく、「どの政党が権力の座にあるか」を基準にして投票行為をしているのである。”
これは、「最も多くの得票を集めた政党の政策を正しいとみなす」というルールを既に多くの有権者達が深く内面化していることを示している。有権者たちは、自分に利益をもたらす政策では無く、「正しい政策」の支持者でありたいのである。すなわち、選挙に勝った政党は正しい政策を掲げたのだから勝ったのであり、負けた政党は間違った政策を掲げたから負けたという命題がまかり通っている。
有権者は「勝ち馬に乗る」ことを最優先して投票行動を行っている。自分が投票した政党が勝って政権の座を占めると、投票した人々はまるで自分がこの国の支配者で有るかのような気分になれる。
「正しい候補者(政党)を選べ」と求められていると思うから。多くの有権者は「勝ちそうな候補者(政党)」に投票し、誰が「正しい候補者(政党)」かわからない有権者は自分には投票する資格が無いと思って棄権する。そうやって日本の民主主義は日々空洞化している。もう一度書くが、投票に際して有権者は「正しい」選択をする事は求められていない。何を求められているのかは、自分で考えて欲しい。>と記しています。
この二つのコラムについて、皆さんはどのような感想を持ちましたか?
とりわけ、日本人の性質として、「新しい状況より現状維持を選択し、多くの人が選ぶ方に身を置けば安全とばかりに、周りを気にして大多数の方に迎合したがる。」ということが自民党を増長させ、自らを苦しめる現状を営々と続けていることに繋がります。
自民党はこれまで、庶民より大企業を、低所得者より富裕層に重点を置く政策を行っても国民は我慢するとし、スキャンダルがあろうと脱法行為をした党所属議員がいたとしても入院させて世間から隔離させ、都合の悪い資料は隠蔽・改竄・廃棄してシラをきり、嘘をつき続けて国民を愚弄する。等ということを繰り返してきましたが、国民の怒りは大きくならず政権を維持しています。そしてそこには、日本人特有の性質が横たわっています。
成熟した社会の大人であれば、そろそろ、責任を持って自らの選択を信じ、新しい政治を選択する勇気を持たなければ、内田氏いわく、日本の民主主義は日々空洞化してしまいます。