水道法改悪
- 2018年07月06日
西日本を襲った梅雨前線による被害が集中した九州、四国、中国地方。
テレビや新聞はこのニュースで持ちきりでしたが、この間隙を縫うように5日の衆議院本会議で水道の民営化を含む「水道法改正案」が賛成多数で可決され、参議院に送付されました。
理由は、大阪北部地震において、老朽化した水道管が破裂するなど21万人以上に被害を及ぼしたことや、7月4日に東京都北区西ヶ原地区においてこれまた老朽化した水道管が破裂し地面が陥没したことなどから「老朽化した水道管問題」が注目され、その解決方法として、インフラの運営権を民間に売却する「コンセッション方式」を導入するというものです。
ご存じの通り、水道事業は自治体固有の事業として運営されてきましたが、現在の水道管が埋設されてから数十年が経過し、地方公営企業法施行規則で定めた耐用年数40年を超えた水道管の割合は14.8%で、このうち更新されたのは0.75%に止まっています。
このペースでは全てが更新されるまでに130年以上かかる計算になりますが、人口減少や自治体財政の悪化などにより、水道のインフラを個別の自治体で賄うことが難しくなったことから、改正案では、複数の自治体が広域で運営し経営の効率化を図る、そのために都道府県が計画を策定してその推進役を担う事も明記されました。
そして、自治体が経営する原則を堅持しながらも、民間事業に運営権を売却出来る「コンセッション方式」の導入も盛り込みました。
しかし、老朽化が問題であれば公営の中で対処すべきですが、水道の民営化は既に国の「産業競争力会議」において、あの悪名高いパソナ会長の竹中平蔵氏が提唱し、2013年には麻生財務相が米国のシンクタンクにおける講演で「日本は水道事業を市営や町営で行っているが、これを全て民営化する」と言及しています。
従って、水道事業の民営化は既に政権内では既定路線であったと言うことです。
水は、生命を維持する上で欠くことの出来ないライフラインです。
このことを利潤追求の民間に任すということ自体、安く安全な「水」がいつでもどこでも得ることが出来るという命につながる人権を蔑ろにすることにつながります。
世界では「水メジャー」と言われる企業があります。
有名なのはスエズの「スエズ・エンバイロメント社」、フランスの「ヴァオリア・エンバイロメント社」、イギリスの「テムズウォーター」の3社で、各国の水道事業に食い込んでいますし、日本では広島市の浄化センターや埼玉県の荒川上流などの水循環センターの維持管理にヴァリオ社が進出していますが、日本では改正前の水道法が機能し、本格的な水道運営権までは委ねておりませんでした。
一方、世界各国で起きているのは運営権を売却した後に水道料金が値上げされ、今までの2倍から5倍以上の負担を強いられてしまったという現実です。
このために、世界の潮流は「再公営化」へと進んでいます。
国際公務労連の調査では、世界35カ国180自治体で再公営化が実施されています。
料金の値上げだけではなく、劣悪な維持管理・設備投資の出し渋り、財政の透明化の欠如、品質の低下、とりわけ水質管理への不信感もあっての再公営化となっています。
再公営化したボリビアでは、平均月収100ドルに対し、水道料金が一気に20ドルまで値上げされ、暴動が起きたことから、契約の解除を申し入れたところ違約金と賠償金を要求されてしまいました。
ビリビアの国連大使は「水と衛生に対する人権」と題した演説で「飲料水と衛生の権利は、人生を最大限に謳歌する必要不可欠な人権です。」と訴えました。
「水は、命をつなぐもの」、人の身体の70%は水分です。
水道事業の民営化は、命を利潤追求の民間に委ねるということで有ることを、与党そしてこの法案に賛成をした党の国会議員は改めて深慮すべきですし、廃案にする勇気も持って欲しいものだと思います。
それとも、貴方とあなたたちの家族は「ミネラルウォーター」だけで生活しているのでしょうか。