永住外国人の地方参政権
- 2010年04月02日
「永住外国人への地方参政権付与に関する法律」が、今国会での提出を見送ることになったようです。
民主党は、「民主党政策集インデックス2009」において、定住外国人の地方(地方自治体の首長や議員)参政権などを早期に実現する」と記載し、その方針は、今後とも維持するとしています。
この問題が様々なところで波紋を呼んでおり、多くの方々の関心も高いものと思いますが、早急に結論を出さなければならない問題とは異にするものであり、慎重に議論しなければなりません。
憲法第15条第1項には「公務員を選定し、及びこれを罷免することは国民固有の権利である」と規定されています。
ここで言う「国民」とは、日本国籍を有しているものと解されます。
一方、憲法第93条第2項においては「地方公共団体の長、その議会の議員及び法律で定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する」と規定されており、ここでいう、「住民」とはその土地に住んでいる人と解されます。
永住外国人を選挙人名簿に載せないことが違憲であると争われた訴訟に対する1995年の最高裁判決では、「住民」とは「日本国民」を指すと指摘していますが、憲法第10条には「日本国民たる要件は、法律でこれを定める」となっているだけであり、この時の判事の一人は、「判例は、在日外国人の地方参政権を認めなくても違憲ではなく、場合のよっては認めても違憲ではない」と述べており、この判決に至る5人の判事の考え方は「地方選挙権は国会で決めることであり、地方自治体と関係の深い外国人に選挙権を認めても、直ちに憲法違反にはならない」というものです。
日本には、第二次大戦中、自国の国籍を剥奪され、日本国籍を付与されていた朝鮮人(韓国含む)、台湾人がおり、これらの人達は、サンフランシスコ講和条約発効とともに、日本国籍も喪失し、「特別永住者」となっていますが、この方々の中にも参政権を求める方もいれば、拒否する方もいます。
また、国内には居住年数など一定の条件を満たしたブラジル人や中国人などの「一般永住者」もいます。
国民には義務が課せられると同時に権利が付与されています。
これらの方々は納税の義務を果たしていますが、権利としての参政権は付与されていません。
現在は国際化の流れが大きくなり、日本国籍を有する者だけの完全に純粋な形で日本が生きていくことは困難な時代となっていることに目をつむるわけにはいきません。
したがって、、永住外国人地方参政権の問題は、この度の法案提出の見送りを機会に、戦争時における歴史的な経過、中国・台湾・韓国・朝鮮という隣国を持つ日本の地勢、国際化の中の日本、国内事情等、広範な議論を時間をかけて行うことが必要であると思います。