現実を見ない領土問題
- 2020年07月06日
改正ロシア憲法の国民投票が行われ、プーチン大統領が8割を超える国民の信任を得たことは既にご承知の通りですが、この結果、日本にとっても北海道にとっても、今後の領土問題解決への見通しが立たない状況になってしまいました。
「領土の割譲禁止」条項は非常に重く、「隣接国との国境画定の作業は禁止対象から除外する」とお情けのような文言を付け加えられても、ロシアは日本との領土問題は解決済みとして交渉事項には加えないことになるでしょうが、ここに至っても日本政府は「影響は限定的」として楽観視しています。
なぜ、大きな問題では無いという態度をとり続けるのかは、はっきりしています。
国内向け、それも安倍政権を支持しているコアな層や、北方領土運動に関わっている多くの国民に対して、強気のポーズを崩すことが出来ないためでしか有りません。
戦後、ポツダム宣言受諾で領土が画定した後に北方領土を占領、その後実効支配し続け、国策として南クリーク地区に住む国民を経済的に優遇し、飛行場を建設しロシア軍を常駐させてきた一方、日本の経済協力を得るために「人道的立場」を強調しながらビザ無し渡航を認めてきました。
一昨年からは「日ロ共同経済活動」で3,000億円の事業計画が動き出してからは、渋々航空機による墓参(元島民が高齢になったため)を認めるようになりましたし、観光資源の発掘とツアーの見通しを探るためにモニターツアーも受け入れ、農業支援や廃棄物処理、医療支援などのメニューについて日本への歩み寄りも見えましたが、それも今後は見通しがつかなくなります。
それどころか、領土返還が絶望的になってきました。
この改正ロシア憲法について、北方領土に行政権を有する鈴木知事は、以下の談話を出しました。その全文は、
<この度、ロシアにおいて行われた国民投票の結果「領土の割譲禁止」の条項等を盛り込んだ改正憲法が成立したものと承知しております。
北方領土問題については、これまで積み重ねられてきた日ロ首脳会談での合意を踏まえ、今後も引き続き領土問題の解決に向けた外交交渉が進められるものと確信しています。
私としては、北方領土を行政区域の一部とする北海道知事として、「北方四島の帰属の問題を解決し、平和条約を締結する」との国の基本姿勢の下、外交交渉を一層加速するよう強く求めるとともに、外交交渉を支え、後押しする取り組みを行って参ります。>となっています。
知事談話でも、政府と同様に、憲法が改正されても領土問題への影響は少なく、以前と同様な取り組みを進めていくという認識しか感じられません。
鈴木知事の外交デビューは、就任後の翌月にモスクワで開催された「日ロ知事会議」で、この場で北方領土問題に触れ「両国の地域同士がさまざまな分野で交流を深めることで信頼関係が強化され、領土問題解決、平和条約締結につながることを期待している。」と述べて地域間交流の牽引役を果たす考えを示しましたが、状況が一変した現実をどのように受け止め、今後、具体的にどのような取り組みを行っていくのかが問われます。