生乳の廃棄(ブログ3150)
- 2023年02月26日
輸入飼料が値上がりし、併せて燃料費や電気代などの高騰により、今、酪農家は大変な環境に置かれています。
今、牛乳の値段は上がっていますが、一方でコロナ禍による消費も減少し、生乳の大量廃棄を余儀なくされており、収入源で約9割の酪農家が経営難に陥っています。
一方、生乳の取引価格が上昇していることから乳製品のバター、生クリーム、チーズ、ヨーグルトなどが軒並み値上がりし、ケーキ屋さんなどはそのことを理由にした値上げがなかなか出来ずに、乳製品を押さえた商品を開発しなければなりません
今、牧場では生乳の生産を減らすため、「生産抑制」という名の下に大量の生乳が廃棄されています。
22年度の目標はマイナス20万トンですが、実質的には13万8,000トンの廃棄となっている一方で、ガット・ウルグアイラウンドの締結により「カレント・アクセス」と呼ばれる農産物の自由貿易のために設けられた13万7,000トンの生乳を輸入しなければなりません。
国内で大量の生乳を廃棄してもまだ目標の20万トンには足りないと言われ、かたや廃棄と同量の生乳を輸入しているという矛盾に酪農家は翻弄されています。
生乳は、生きている牛から搾るものです。従って生乳生産を減産すると言うことは牛を処分することにつながります。1頭処分すると15万円支給されますが、産まれたばかりの湯気が出ている子牛を、母牛が舐める時に引き離して処分を判断する酪農家の気持ちは悲しさに溢れています。
農水大臣は、「カレント・アクセスについて、国際貿易として国が約束したものを簡単に削減するということになると、他国からクレームが来る。あるいはペナルティーを課せられる恐れもあると思います。」と話し、酪農家の現実を見ようともしません。
しかし、本当にそうなのでしょうか。
東京大学大学院農業経済学の鈴木宣弘教授は、「カレント・アクセスは全く輸入義務ではない。国際法上もどこにも書いていない。輸入しなければいけないと説明していますが、それも全く根拠がありません。この輸入を止める。そして国内の酪農家さんと国内の消費者を守るために、政策転換をする必要があります。もう限界だと思います。」と話しています。
ガット・ウルグアイラウンドの締結国の中にも、国内事情によりカレント・アクセスによる農作物の輸入量を減じている国もあります。
なぜ政府は、外国に「いい顔をするため」に国内産業をいじめるのでしょうか。