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百年記念塔の存廃は

  • 2022年08月24日

 自民党保守系国会議員のグループ「日本の尊厳と国益を護る会(会長青山繁晴参議)」の青山会長が、北海道百年記念塔の解体にノーを突きつけるような発言をしました。

 青山氏が記者団に「開拓の歴史を亡きものにすべきでは無い。」と述べ、地元出身で同グループの和田義明内閣府副大臣は、「道が積算した維持費は過大だ。」と反発しました。

 北海道百年記念塔は、札幌近郊の野幌自然公園内に建立された高さ100mのモニュメントで、総工費約5億円の半分の2億5,000万円は道民の寄付となっています。

 1968年に着工し1970年に竣工、複雑な構造を持つ塔は、内部に雨水が溜まりやすく腐食が想定以上に進行し、これまでに数度に及ぶ大規模修繕を行ってきましたが完全修復には至らず、2014年には金属片が落下し老朽化が原因と判断されて階段で登れた8階部分の展望室を含めて塔内は立ち入り禁止となっていました。

 2016年に道は、有識者で構成する「北海道の歴史文化施設活性化に関する懇談会」で存廃を検討、2017年には今後50年間の維持費を、展望台も含めて原状復帰した場合で28.6億円、展望台を封鎖した現状維持で26.5億円、解体・除去で4.1億円と試算。

 これに基づいて、当時の“髙橋はるみ知事”が記念塔の解体を判断し、跡地に将来の北海道を象徴する新たなモニュメントを建設する事として道議会に解体に伴う基本設計費を提案、道議会自民党も賛成して予算は成立、その後、実施設計費も議会に提案されて可決、
これに沿って2021年には解体の事前調査が終了、この時点でさらに損傷が進んでおり、解体費試算を原状復帰で30.7億円、現状維持で28.4億円、解体・除去で7.2億円と訂正されました。

 一方、市民団体の「北海道百年記念塔存続プロジェクト」が、記念塔を将来に残す活動として建築の専門家からもアドバイスを受け解体反対の活動を進めており、住民監査請求、さらに記念塔の所有権は道民にあるとする「地位保全の確認宣言請求」を札幌地裁に提訴、地裁は訴えを却下する判決を出し、原告が控訴、さらに、「公金支出差止請求」を提訴しています。

 北海道百年記念塔は、北海道開拓の歴史を残すためのものでしたが、開拓の歴史は一方で、原住民であったアイヌの方々から土地を奪い、彼らの生活習慣や文化を否定し和人(日本人)への同化を進めてきた歴史でもあり、アイヌの方々には負の象徴と受け止められています。

 そこに、今回の自民党保守グループの介在です。

 既に、行政としては今年度当初予算に解体費を計上、7月には業者の入札が終わり、今月には契約を行い10月に工事着工と手続きが進んでいます。

 仮に、工事に何かしらの支障が生じる、或いは解体が行われないとすれば、髙橋はるみ知事の決断の後を受けた鈴木直道知事が計上した予算が執行されない事になります。

 さらに、これまで道議会の過半数を占め、積極的に髙橋はるみ前知事や鈴木直道現知事を支えてきた道議会自民党の判断が間違っていたことにも繋がります。

 加えて、解体を判断した自民党参議院議員の髙橋はるみ氏は、この問題についてどのような対応をとるのでしょうか。内閣の一員である和田義明副大臣は、維持費を国で負担するのでしょうか。自民党の一グループが地方自治体の判断まで左右しようとしている現実に、時代錯誤を思い浮かべます。様々な問題を孕んでいる記念塔、道議会の9月議会が注目されます。


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