真の民族共生を
- 2020年07月11日
今日、「民族共生象徴空間・ウポポイ」の開業式典が開催され、来賓として出席しました。
会場は、JR特急北斗が新たに停車することになった白老駅のすぐ側、ポロト湖の湖畔に整備された国立アイヌ民族博物館をメインにしたエリアです。
野外ステージで行われた式典には、主催者側として政府から菅官房長官、萩生田文科相、青木国交副大臣が、来賓として加藤北海道アイヌ協会常務理事、鈴木北海道知事、戸田白老町長、道内選出国会議員、道議会正・副議長、道内アイヌ協会関係者などが出席し、開業式辞、来賓挨拶の後にウポポイ管理運営する「公益財団法人:アイヌ文化財団」の紹介、そしてアイヌ古式舞踊が披露され、式が終了。
その後、エリア内にある博物館、体験交流ホール、体験学習館、工房、伝統的コタンなどの見学会が行われました。
私が会場に着いたのは開会約20分前ですが、入り口ゲートの前ではアイヌ民族らの市民団体が、遺骨返還やアイヌ差別などについての抗議行動をしていました。
昨日は、ウポポイ開業式典に出席する萩生田文科相が「価値観の違いを差別とひとくくりにすることがアイヌ文化の伝承のためにいいのかどうか」と発言し、物議を醸しました。 文科相でありながら歴史認識に異を唱える発言をするところに、今の政権、閣僚の危うさがあります。
すべからく日本人(和人)は悪くないという歴史修正主義が踏襲され、差別があったことは価値観の違いで済まそうとするところに、アイヌ民族の人権回復への遠い道のりを感じます。
式の終了後、帰りのJRまでの少しの間アイヌ民族博物館を急ぎ足で見学しましたが、アイヌ文化や生活などの展示がその主流を占め、アイヌ民族が明治政府の同化政策によって言葉や土地を奪われ、生活の糧である狩猟も制限、教育や就職、結婚など全ての生活の中に差別が持ち込まれきた事実などを、その展示から垣間見ることが出来ませんでした。
2019年にはアイヌ政策有識者懇談会が「明治以降、同化政策でアイヌの人々は差別や偏見に苦しんできた」と指摘し、同じ年に制定された「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律(アイヌ政策推進法)」が施行され、その第4条には「何人も、アイヌの人々に対して、アイヌである事を理由として差別すること、その他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。」と、改めて「差別禁止」を規定しています。
このウポポイが、「民族共生」に名を借りた国のポーズだけにならないよう、具体的な施策を持って真の共生を実現していかなければなりません。