石油備蓄放出
- 2021年11月24日
岸田氏がやっと重い腰を上げ、石油の備蓄を放出する判断をしました。
しかしこれも又、米国の働きかけに呼応して、石油消費国の中国、英国、韓国、インドなどと協調して放出するということです。
日本の場合、法律上基本的には産油国が集中する中東の政情不安や災害による供給不足に限るという制約がありますが、今回は初めて国民生活や経済に影響する石油の値段の高騰に対処するための放出となります。
法を越える判断をするのに閣議で決定というのは、それはそれで問題が無い訳ではありませんが、発電から物流、民生部門、生活関連、経済部門全てに影響する問題ですから、緊急避難的に放出することは理解します。
しかし、放出する量は備蓄量のうちのわずかな量ということですから、どの程度の効果が有るのか、あまり期待が出来ないようです。
さて、消費国が備蓄を放出する事が明らかになると、「OPEC」や「OPEC+」の産油国が原油の減産を行う可能性があり、産油国VS消費国という図式が出来上がります。
産油国が減産すれば原油価格は高騰する、そしてそれに対抗して消費国は備蓄を放出する。どちらかが白旗を揚げるまでのチキンレースとは思いたくありませんが、何となくそういうことが想定されます。
世界はCO2排出削減にシフトし始めていますから、化石燃料である原油の需要は年々低下していくでしょう。そうなれば原油に頼った産油国の財政は大変なことになります。
その事を見越して産油国は、細く長く財政を確保するために生産を抑制してきたのでしょうが、結果としてコロナウィルス感染症の収束時における経済活動の回復に水を差すことになろうとしていますから、消費国としても引くことの出来ない状態での放出ということになります。
ちなみに、世界の原油の埋蔵量は20年の統計で1兆7,324億バレル(1バレル≒160㍑)で、可採年数は約50年とも言われています。
しかし、あと10年でエネルギー供給環境は大きく変化するでしょう。そして、20年もすれば化石燃料自体の需要は大きく見込まれなくなるかも知れません。
産油国は、世界と協調する中で原油の生産を考えてほしいものだと思います。