種苗法改正
- 2020年11月21日
十分な議論の時間も保障されないうちに、日本の農業にとって大きなダメージとなる「種苗法」が可決してしまいました。
よき引き合いに出されるのは、平昌冬季五輪でカーリングのロコ・ソラーレがもぐもぐタイムの時に食べていた「イチゴ」がとても美味しいとテレビに映し出され、そのイチゴが日本から流出した品種を基に韓国で交配されたものであったこと、また「シャインマスカット」の苗木が中国に渡り、現地で勝手に栽培され中国国内で高額で流通していたことが挙げられます。
その原因が国内で品種改良した苗やタネなどの優良農産物の知的財産が簡単に海外流出していたこと、さらに高品質の果物などを海外に輸出する場合、相手国での「品種登録」を怠っていたことにあるとしています。
そして、農水省は農家によるタネなどの自家増殖が海外流出の原因となっているとして
優良農産物の海外流出阻止のために国内法を整えるというのが「種苗法改正」の趣旨となっています。
確かに、「とちおとめ」などのブランドイチゴの一つである「レッドパール」は、開発者である愛媛のイチゴ農家N氏の人柄につけ込み、韓国の農業研究者が拝み倒して苗を手に入れ自国で栽培し、韓国内で多額の利益を手にしましたし、今や韓国のイチゴは勝手に交配され「雪香(ソルヒャン)」、「梅香(メヒャン)」、「錦香(クムヒャン)」などのブランドで販売され、日本のイチゴ輸出を超え、韓国民はそのイチゴが日本の品種だったとは知らずに韓国独自の品種だと信じて疑いません。
そして、これが農水省の指摘する自家開発品種の知的財産の海外流出と言うことになります。
また、「シャインマスカット」は、開発した農研機構(国立研究開発法人・農業・食品産業技術総合研究機構)が、輸出を考慮していなかったという理由で、中国での「品種登録」を怠っていたことに原因があり、今後、「品種登録」を促進していくことも改正法の趣旨に含まれます。
日本には、イチゴやブドウの他にも桃やサクランボ、メロン、デコポンなどの柑橘類など、高品質の果物が全国何処にいても手に入ります。
しかし、今後は、長い年月をかけて開発した高品質の品種を守っていくことも農業の戦略として欠くことができません。
そのため種苗法改正、は新品種を開発して登録した育成権者の知的財産を守るために大事であるという事は理解できますが、一方、農家にとって大きな問題も横たわっています。
農家は農産物をつくるときに、まずお金を払ってタネや苗を買います。収穫したらその大部分を販売し、一部のタネを残して翌年の栽培に使用します。これを「自家増殖」といい、現行法では認められていますが、種苗法改正案によって、このことが原則禁止となってしまいます。
種苗法改正案は、先に述べたように新品種を開発して登録した育成権者の知的財産権を保護する法律ですが、その反面、真の狙いは世界の種子市場を寡占的に支配している多国籍企業への利益供与だとも言われています。
改正案が成立すれば、登録された品種を栽培するために前年度に残していたタネを使用する出来なくなり、種苗を全て購入するか、育成権者の許諾を得て自家増殖することが必要となります。
許諾の場合も多くは有料ですから、農家には大きな経済的負担が生じます。
毎年、種苗に多くの資金が必要になれば、収穫して販売しても収入は大きく減少してしまいます。
これまでに国内農業で培われてきた主要農作物のコメ、ムギ、大豆を含む穀物や野菜などの種苗の自家増殖は、農家の権利であり、農業の根幹を成すものです。
新品種の知的財産の保護や海外での品種登録を推進することと、農家の自家増殖をこれまでのように守ること、そのために改正案を修正することも視野に入れなければ、日本の農業は大きな打撃を受けることになってしまいます。