背景

ブログ月別アーカイブ

ブログ

>>前のページへ戻る

立証責任転換論(ブログ3209)

  • 2023年05月06日

 「立証責任転換論」と言うのが有ります。

 1992年10月29日に最高裁が行った伊方原発訴訟判決において、「立証責任は、本来、原告(訴訟を起こした市民側)が負うべきものと解されるが、当該原子炉施設の安全審査に関する資料を全て行政庁側が保持している事などの点を考慮すると、行政庁の側において、まず、その依拠した具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過程等、被告行政庁の判断に不合理な点がないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する必要があり、行政庁が主張、立証を尽くさない場合には、行政庁がした判断に不合理な点があることが事実上推認されるものと言うべきである。」と判断しています。

 すなわち、<本来は訴訟を起こした原告側が事案に対して立証責任を負うものだが、本件は、原発という特殊な設備に関し高度の知見を有し、関わる膨大な資料を有している被告が安全について立証しなければ、その主張に不合理な点があると推認すべきだ。>という事で、これが「立証責任転換論」と言うことになります。

 この立証責任転換論は、4大公害訴訟で培われ、四日市公害訴訟では<膨大な専門知識と知見を有する大企業との闘いで、「立証責任を全面的に訴えた側が負う」従来の民事訴訟では住民側に勝ち目が無いが、目の前には公害被害が存在している。したがって、有害物質を放出する者は、その有害物質が人々の生命や健康に影響を与えないことを立証する責任がある。>  としており、最近の原発訴訟の司法判断でも多く採り入れられています。

 16年4月福岡高裁宮崎支部:川内原発仮処分即時抗告、17年3月広島地裁:伊方3号機広島仮処分、17年7月松山地裁:伊方3号機松山仮処分、17年12月広島高裁:伊方原発3号機広島仮処分即時抗告、20年1月広島高裁:伊方3号機山口仮処分即時抗告、20年12月大阪地裁:大飯3・4号機本訴、21年3月水戸地裁:東海第二本訴、22年5月札幌地裁:泊本訴等がその例です。

 さて、この度の四国電力伊方原発運転差し止め仮処分判決では、裁判所がこれまでの「立証責任転換論」を無視し、「被告側(四国電力)は適合性の判断主体では無く、あくまでも運転申請を行った者であることからすると、新規制基準に適合していることについて主張、疎明を行えば足り、相手側はこれを行っていると言えるから、原告側が規制委の具体的な審査基準に不合理な点があり、或いは、規制委の調査審議及び判断の過程に看過しがたい過誤、欠落がある事について主張疎明すべきである。」と判断しました。

 さらに、「判断に用いられる具体的な審査基準(新審査基準)に不合理な点があるとしても、それだけで、直ちに原告らの生命、身体等が侵害される具体的な根拠があるとの疎明がされたとは言えない。」との見解を示しました。

 これは、裁判所自らが「規制委の審査基準が不合理でも、すぐに原告の身体等に影響が有る訳では無い。」と判断したことになります。そうであれば、規制委の審査基準とは一体どんな意味を持つのかということではないでしょうか。ルしかこないとし(これは震度5弱)、規制委はこの181ガルを、たったの18秒の審査で認めています。

 規制委も司法も政府の回し者だとしたら、国民関西原発は、南海トラフ地震でも伊方原発の基準値振動は181ガは何を信じていいのでしょうか。


Copyright(C)高橋とおる後援会 All Rights Reserved.