給特法(ブログ3783)
- 2024年12月23日
政府は、30年までに教員の時間外手当にあたる「教職調整額」を、現行の4%から10%に段階的に増額をする事を決めました。
これは、「公立の義務教育学校等の教育職員の給与に関する特別措置法(給特法)」による規定の変更ですが、果たして、10%にする事で教育職員の働き方改革と正規の時間外勤務分の調整が図れるのか疑問です。
戦後1948年、公務員労働時間が週48時間となりました。
しかし、当時の文部省は、48時間を超える教育職員の時間外勤務について<勤務の態様が区々、学校外で勤務する場合は、学校の長が監督することは実際上困難であるので、原則として超過業務は命じない。>と指導したことから、学校長は教育職員が時間外に及ぶ勤務が常態化していることを知りつつ、時間外勤務を命じませんでしたし、一方、教育職員の多くは生活の大部分を仕事に費やさなければならないのでした。
現場の先生達は、この理不尽な取り扱いに対して各地で訴訟を起こし、その結果、1971年に上記の特措法が制定され、時間外勤務や休日勤務を支払わない代償措置として基本給の4%を調整額として支給する事になりました。そしてこの4%は、今も変わらずに続けられています。
教育職員は、授業の他に、生徒指導、保護者対応、課外活動(部活)の指導(土日や大会の引率等)、学校行事の企画から運営、地域の任意団体の仕事(例=中体連関連等)、その他にも、諸々に仕事をしなければなりませんから、まさに4%で「定額働かせ放題」ということになります。
北海道教職員組合が道内の教育職員にアンケートを行った結果、時間外在校等時間は、1ヶ月平均で、小学校41時間31分、中学校51時間53分となり、当然のことながら持ち帰りもあり、それを含めると小学校51時間45分、中学校58時間45分となっています。これは、上限45時間を超えていますし、過労死基準である80時間を超える方の割合は、約20%にも及んでいます。
さらに、平均の睡眠時間は6時間~7時間が37.2%、5時間~6時間が34.3%、4時間~5時間が11.4%、3時間~4時間が1.3%、3時間未満が0.3%となり、実に全体の47.2%が6時間以下の睡眠時間となっています。教育職員は寝る時間を削って働いている事になりますし、メンタルに陥ったり健康を害する原因にもなっています。
また、単純に月収30万円の給与とすれば、4%分は12,000円で、これを10%にしても、月に30,000円です。公務員の時間外勤務の金額の算出方法は、個々の給与を1時間に換算して、その金額に対して平日は100分の125、休日勤務は100分の135、午後10時以降は100分の150を支給する事になっています。
全国の教育職員に、現実の時間外に合わせて残業代を支給した場合、約2兆円の支出増が想定されると言うことも明らかになっています。
そして今回、文科省は25年度から13%への改善を要求しましたが、財務省は働き方改革を進める事を条件に30年度まで段階的に10%と値切ってしまいました。
教育職員の犠牲のうえに成り立っている義務教育。これでは、教育職員を目指そうとする若い後継者はいなくなってしまいます。