脱炭素への欺瞞
- 2020年07月08日
梶山経産相が「脱炭素社会を目指すために旧型の石炭火発約100基を休止する」との方針を打ち出し、日本もやっと地球温暖化に関わるパリ協定に本格的に取り組むのかと歓迎する声が起こりましたが、やっぱりそこには経済界の思惑と供に政府の小賢しい欺しが含まれていました。
発表では、現在稼働している旧型114基のうち100基前後を廃炉の対象としますが、石炭火発は50万kw~100万kw級の大規模なものから10万w~20万kwという小規模なものまであり、今回対象になるのは、もっぱら小規模の火発が主流となります。
政府がナゼ旧型を廃炉にするかと言えば、現在建設中や計画中の石炭火発は高効率型で14基・計910万kwとなります。
既存の石炭火発は約4,200万kwで総発電量の約30%を占め、新たな石炭火発が稼働すると発電構成比は40%に達し、国際的に大きな批判を浴びることになります。
従って、30%前後を維持しようと旧型の小さな火発を廃炉とすることに決めました。
当然、減価償却が終了しこれから利益を生み出す発電所なので電力会社は反対ですが、経産省が押し切ったようです。
それでは、高効率型の石炭火発は旧型火発に比較してどれだけCO2の排出を削減出来るのでしょうか。
発電1kwh当たりのCO2排出量は、旧型(従来型)で0.867kg、高効率型(USC型)で0.8~0.84kgとなっており、平均減少幅は約5%程度にすぎず、たいして変わりがありませんので、高効率型という言葉に欺されてはいけません。
開発中の次世代型(IGSS型)は約16%減少させることが出来ますが、やっと実証実験が終了したばかりで本格的導入はまだまだ先のことです。
ちなみに、LNG火発は約0.42kgで、CO2排出量は石炭火発の2分の1となっています。
石炭火発について、仏国では22年までに全廃、英国は25年に全廃、石炭王国の独国では38年に全廃と、欧州を中心に現実的なCO2削減に舵を切っています。
政府だけでは無く企業も「地球温暖化による気候変動が企業の持続を脅かしている」としてSDGs(持続可能な開発目標)を掲げ、海外の取引先にも再生可能エネルギーの利用を要求しており、大手金融機関や投資ファンドも石炭に関わる企業への融資を引き上げています。
今、日本は九州を中心に異常気象の影響をまともに受け、多くの国民が命を失い、家屋や土地、インフラを含む社会資本を喪失しています。
被災地は「50年に1度が毎年やって来る」と嘆いています。
その悲惨さを目にしながら、政府はポーズだけCO2削減を語り、実質的な削減に踏み込もうとしません。
このことは、現在の国民に対する裏切り行為だけでは無く、未来の国民への背信行為では無いでしょうか。(参照:論座・木代泰之氏“経産省に欺されるな!”、中国新聞コラム“石炭火力削減 全敗の道筋、なぜ示さぬ”)