自衛隊法改正で得るもの
- 2013年11月02日
自衛隊法の改正案が衆議院を通過したとのニュースがありました。
今年1月にアルジェリアにおいて、現地で石油プラントの建設に携わっていた「日揮」の社員がテロに巻き込まれ人質になった事件で、日本は航空機や船舶以外、直接邦人の輸送ができず、当時は現地のアルジェリア政府が陸上輸送を担ったことから、陸上においても自衛隊が武器を携えて邦人救出にあたれるよう検討が行われていました。
しかし、今年の2月15日、16日のブログに掲載したように、海外の紛争地において、軍と見なされている日本の自衛隊がその国の了解を得ず行動することは出来ません。
そして、自衛隊が行動することを紛争国は侵略と見なし、相手国は日本が参戦したと理解します。
ここで、改めて、2013年2月16日のブログの一部を再掲します。
《これまで、自衛隊は救出経路の安全を前提とし、現地政府の協力の下に最寄りの空港や港湾に日本人を集結させてくれることを条件としていましたが、自衛隊法が改正され、安陪総理の言うとおり自前で救出するということは、奥深くに有る現地まで進入し、陸上部分の輸送も「経路の安全を前提とすることなく」行うということになります。
しかし、経路が安全でないということは、すなわち現地政府が安全を掌握していないということであり、そこが戦場であるということを意味します。
そこに、武装した自衛隊が入るには、現地政府の同意が必要となってきます。
同意無く武装した軍隊が他国へ入ることは侵略となります。今回、アルジェリア政府は外国軍の介入を拒否しました。それは、外国軍の支援を受けると言うことは自国に問題解決能力が無いということを意味することと、政治的干渉を受けないためでもあります。
奥地までの陸上輸送には、多くの車両、護衛のための戦闘部隊の構成、現地軍との調整、大型輸送機の手配、燃料補給、車両等整備班などが必要となり、一人の救出にも数百人規模の部隊が必要になり、隊員に語学や武器使用基準などを教育しなければならず、準備に数週間の時間を要することになるだけではなく、土地勘が無く、地理に詳しい敵との遭遇は自殺行為に等しいものとなります。
海外展開する邦人を保護する目的で改正される「自衛隊法」いわゆる邦人救出は「戦闘を前提」とした輸送作戦となり、決して簡単ではなく、時間的に間に合わないか、間に合っても相当多くの犠牲を覚悟しなければなりません。
また、たとえ自衛隊を派遣しても治安維持に責任を持つのは当事国であり、自衛隊が他国の主権を無視し、救出活動を勝手に行うということはできるはずもありません。
ましてや、他国での戦闘行為を行うことはテロ戦争の当事者となることを内外に明らかにすることになります。
参照:「週刊金曜日」2月1日号 内閣官房副長官補、現NPO法人国際地政学研究所 副理事長 柳沢協二氏 「政治家の無知ほど危険なものはない」》
自衛隊法改正は、邦人救出という誰もが「もっともだ」と思われる名目で、海外での武器使用を認めるものとなります。衆議院は十分な議論を行ったのでしょうか。