裁量労働制の不正適用
- 2017年12月30日
野村不動産で、社員約1,900人のうち約600人に「企画業務型裁量労働制」を適用していましたが、この中には営業活動をさせられていた方が多く、裁量労働制の不当適用案件の疑いがあるとして東京労働局が是正を勧告しました。
裁量労働制は、現在、研究開発職などの限られた職種に適用されており、業務の性質上、実際の労働時間とは関係なく、労使であらかじめ定めた時間分を働いたとみなすもので、業務遂行の手法や手段について大幅に労働者の裁量に任せる「みなし労働時間制」の一種として導入されたものです。
いわゆる、通常の9時~17時という定型労働時間や残業などの枠にとらわれず、成果を挙げれば良しとするもので、当然、時間配分も労働者の裁量ですから残業や時間外勤務を行っても残業手当は支給されません。
この制度を採用するには、職種が専門的職種や企画管理業務に限定されていて<①新技術の開発・研究その他の研究職②情報システム・プログラマー等③出版関係における記事の取材・編集業務④広告制作やデザインの考案業務⑤テレビ等の放送番組、映画等の制作プロデューサー、ディレクター業務⑥コピーライター⑦情報処理システムコンサルタント⑧インテリアコーディネーター⑨ゲームソフト開発者⑩証券アナリスト⑪金融商品開発業務⑫大学における教授研究業務⑬公認会計士⑭弁護士⑮建築士⑯不動産鑑定士⑰弁理士⑱税理士⑲中小企業診断士>となっています。
野村不動産の場合、その業種から⑯の「不動産鑑定士」という職種が「裁量労働制」に該当するかも知れませんが、それ以外は不適用のはずです。
しかし、野村不動産では職種ではなく課長・課長代理600人に適用して営業をやらせていたとのことです。
営業職に裁量労働制を適用すれば、成果としてのノルマ達成のために土日も休まず、平日の勤務時間も関係なく、ものが売れるまで働き続けねばなりません。
したがって、営業職に裁量労働制を導入することは長時間労働につながり、果ては過労死までつながる懸念が有り、対象外としていましたが、安倍晋三は働き方改革の中で、この裁量労働制の範囲を大幅に緩和し、営業職にまで拡大しようと目論んでいます。
まさしく安倍晋三の働き方改革は、労働者の為の「働き方改革」ではなく、企業の側の「働かせ方改革」と言うことなります。