酪農の危機(ブログ3187)
- 2023年04月14日
酪農に関わる飼料の高騰や、経営を圧迫する電気代の高騰、販売する子牛価格の下落などに対し、酪農・畜産の生産者が危機突破緊急集会を実施し、政府に対し経営支援を求めました。
酪農の置かれている今の状況は目を覆うばかりです。
ほぼ全量といっても良いくらい輸入に頼っている飼料が、ロシアによるウクライナ侵攻などにより、べらぼうに高騰しているだけではなく、コロナ禍での学校休校による牛乳の給食利用減少や消費の低迷で大量に余剰を抱え、生乳の多くを廃棄処分する一方、乳製品の価格が値上がりして消費抑制に拍車をかけています。
道では、需要減に対して乳牛を「廃用牛」として食肉用に出荷するように促しましたが、供給が溢れ廃用牛価格も大幅に下落、1頭15万円の処分料が5,000円にも満たない事もあり、酪農家は生まれたばかりの子牛を母牛から引き離し薬殺処分をする事も。
北海道と千葉県の酪農家を調査した結果、98%が経営赤字に陥っていることが判りました。酪農業を廃業する方だけでは無く、機械や設備を更新した酪農家の中には、借金を払いきれず悲しい決断をした方も少なくありません。
政府は、余剰の乳製品を買い上げてフードバンクや子ども食堂などの困窮対策に活かすべきですが、そんな施策を打つこともせず、「牛乳を搾るな、牛を処分しろ」と、全くの
無策です。
米国やカナダ、 EUなどでは、設定された最低限の(酪農家に赤字を生じさせない)価格で政府が買い上げ、国内外の援助に回しています。
同じ事がなぜ、日本で出来ないのか。
政府の言うとおりに牛を淘汰してしまえば、乳製品が足りなくなっても種付けから搾乳まで最低3年が必要となり、いざ必要な時には間に合いません。
日本は、政府が行う援助政策が米国の海外市場を奪う可能性が有り、米国の怒りを買うことを恐れています。
日本は、ガット・ウルグアイラウンドのカレント・アクセスにより、生乳換算で13.7万トンを輸入しています。一方で、先ほど記載した生乳の道内における廃棄量は約14万トンにも及んでいます。
日本は米国を恐れて13.7万トンを輸入し、自国の14万トンを廃棄処分にしてるという現実を皆さんはどのように受け止めるでしょうか。
しかも、カレント・アクセスは確実に守らなければならない国際約束ではありません。
現実に、米国やUEは自国の内情などを理由に約束を履行しているわけでは無く、GATT協定第17条の「国家貿易企業」の定義に照らせば、国家の内情や政治的な思惑で自由な貿易が歪められてはならず、「商業的な考慮」に従うよう記載されています。すなわち、自国内の商業的な理由を歪めてまでも約束を守る必要は無い。と言うことになります。
日本は「国内援助」と言うと、米国の市場を奪う事になって怒りを買うことを恐れ、自国の酪農業を犠牲にし続けています。まさに亡国の農政と言わずして何と言うべきなのでしょうか。