開催判断は科学的に
- 2021年02月22日
全豪オープンテニスが終了しました。結果は男子は錦織圭選手が一回戦線で敗退しましたが、女子は大坂なおみ選手が優勝しました。
この全豪オープンでは、ご存じのようにチャーター便で選手が移動しましたが、このチャーター便から感染者が出たため、選手は2週間の間基本的にホテルから出ることができず、練習もままならない中で、本番を迎えました。
その影響は、それぞれの選手によって様々だったでしょうが、誰もが体調を万全に整えて試合に臨んだわけではありません。
1回戦で敗退した錦織圭選手も、思うように練習ができずメンタル・フィジカル両面で不十分な中での挑戦だったと述べています。
五輪はアスリートにとって4年に1度、自ら磨き上げた技と力を発揮して世界一を目指す大会ですし、その栄誉は選手だけでは無く、一緒に取り組んできた監督・コーチ、そして家族にとっても大きな喜びとなります。
さて、コロナ禍の東京五輪はそんな関係者の期待に沿うような大会になるのでしょうか。
改めて考えてもそのような大会にはなりそうもありません。
◇国内ワクチン接種も不十分
これまでも心配していましたが、ここに至って国内のワクチン接種が大幅に遅れ、高齢者への接種も予定より1ヶ月程度遅れて4月中からになりますし、そこから始まって順調に推移したにしても7月に入ってしまいます。つまり五輪開催の7月になっても一般の方には接種が始まっていないことになります。
◇各国の参加が見込めるのか
東京五輪の参加国・地域数は205(予定)、参加人数約12,000(予定)となっています。
昨年の10月、IOCバッハ会長とコーツ副会長が「ワクチンに関係なく、東京五輪は開催できる。」と発言した段階で行われたIOCと東京五輪組織委員会との協議では、非公式ではありますが、“日本・中国・米国を中心に無観客で開催し、7月には冬を迎えている中南米やアフリカは不参加を想定、ドーピング禍にあるロシアは排除し、EU諸国は各国の判断に任せる。参加国は総勢約30ヶ国前後を想定。”と考えられていたこともあったようです。
それから時間も経過し、今は各国でワクチンが接種されています。先行して始まっている国は20日現在で約80ヶ国と報道されていますが、国連のグレーテス事務総長は17日の安全保障理事会で、「世界のワクチン接種の75%がわずか10ヶ国で行われ、130国以上が受け取っていない。私たちが安全になるのは全員が安全になった時だ。」と公平な分配の実現を訴えています。
それにしても、各国では代表選手の選考も遅れています。
また、五輪に参加する選手は、その国の1流アスリート達です。
国内のワクチン接種が遅れている日本、そして時差や練習不足を補う調整が十分に出来るのか不明、さらに12,000人以上が一カ所に集まる選手村、食堂での食事は密を避けられない等々、そのような状況下に1流の選手を送るでしょうか。
◇医療従事者やボランティア
東京五輪には1万人の医療スタッフを用意すると組織委は話していますが、東京都だけで賄うことは出来ませんし、地方は更に医療従事者が不足しています。さらに、期間中の外国人関係者のコロナ感染については日本医師会の中川会長が受け入れは難しいと話しています。
重症者ベッドも十分ではなく医療が逼迫している中でも、外国人五輪関係者の治療を優先しなければ国際的な信用を失いますし、かといって国民を後回しにする事は許されません。
また、救急や災害対応はどうするのかも定かではありません。
ボランテイアも国内各地から8万人募集していますが、PCR検査体制も懸念されます。
◇真夏の大会
予定では、オリンピックは7月23日の開会式から8月8日の閉会式まで、パラリンピックは8月24日から9月5日までで、東京はこの季節、例年灼熱の炎天下となります。
東京都もコロナ禍の前は、選手や観客の熱中症に配慮し、マラソンや競歩を止むなく札幌開催にしましたが、札幌でさえも最近は30度を越える日は珍しくありません。
仮に路上競技が無観客だとしても、関係者が熱中症で倒れた場合、発熱していることが想定されますが、その場合医療者でもコロナと熱中症の区別は難しいと思われますし、周りはコロナを疑いパニックになることが想定され、競技どころでは無くなります。
その他にも懸念される材料は様々有るだろうと思います。
課題の多い東京五輪、「コロナ禍に打ち勝った証としての開催」と菅氏は意気込んでいますが、開催時期に至ってもまだまだコロナ禍との闘いの真っ最中でしょう。
東京五輪を開催するか中止するかの判断は、精神論では無く客観的にそして科学的評価の基に行われるべきです。