防衛費を2%に
- 2021年12月11日
いよいよ来週から補正予算を巡る予算委員会が始まります。
18歳以下への10万円支給政策に関わる5万円のクーポン券が大きく取り沙汰されていますが、忘れていけないのが約7,700億円におよぶ防衛費の増額補正です。
そもそも補正予算とは、当初予算に予定していない緊急事態に対処するための支出が必要となった場合に新に追加する予算のことを言いますが、防衛費の追加補正は、今すぐに支出しなければならない緊急を要する支出なのか、この説明がまったくなされていません。
そんなことは関係ないとばかりに乱暴に予算を計上しましたが、当初予算と合わせると優に6兆円を超え、国是としてきたGDP1%枠も有名無実の規制となりそうです。何せ、自民党の高市早苗政調会長は、衆議院選挙の公約として防衛費GDP2%を書き入れていましたから、着々とそれを既成事実とする動きとも受け止められます。
さて、今年のGDPは約595.5兆円と政府が見積もっていますので、これの2%とは約11.9兆円という膨大な額となります。
今年度当初予算の防衛費は約5.1235兆円ですから、公約を実現しようとすると、約6.77兆円の増額となり、この約11兆円をドル換算すると約1000億ドルで、これは、米国の防衛費約7780億ドル、中国の約2520億ドルに次ぐ世界第3位の防衛費となり、ロシアの617億ドルの1.6倍となります。<ダイアモンド・オン・ライン:軍事ジャーナリスト田岡俊次氏>
そして田岡氏は、2%枠が現実的では無い事を、自衛隊員の数と武器の増強の2点から指摘しています。
一つは、自衛隊員の増員ですが、現在も防衛省設置法で定められている自衛隊員の定数は24万7154人ですが、昨年末の実数は22万7442人で、1万9712人が定員割れ(定員に満たない状況)となっています。
これは、少子化の影響と2015年に成立した安保法制により、集団的自衛権の行使と海外派兵が認められたことによって、自衛官への本人志望者が減少し始め、さらに家族も子弟を自衛官する事に躊躇し始めたことが大きく影響しています。
このために、2018年から一般隊員の採用年齢を「18歳以上33歳未満」と拡大しましたが、32歳で入隊した“新兵”が2士で入隊すると、前年18歳で入隊した隊員は1士に昇格しており、13歳も年下の先輩から指導を受けることになります。
これは自衛隊員の士気に少なからず影響しかねません。
また、海上自衛隊では2000㌧級の小型護衛艦の定員120人を、3900㌧に大型化しつつ定員を90人にする省力化を図っていますし、女性自衛官の募集にも拍車がかかり、2010年に比較して2020年は2.2%増の約1.7万人で全自衛官の約7.4%となっていますが、30年には9%まで引き上げる計画となっており、既に妊産婦休憩用のマタニティースペースの設置や出産・育児休業後の研修制度、ベビーシッターサービスも徐々に導入しています。
職種も、海上自衛隊では女性幹部(士官)の登用を進め、第1護衛隊(軽空母1隻、護衛艦3隻)の司令に女性1佐(大佐)が任じられていますし、その他にも潜水艦勤務や戦闘機のパイロットも含め、ほぼ全般に及んでいますが、それでも、先ほど記載したように定数を満たすまでには至っていません。
さらに、政府が中国の海洋進出を想定しながら沖縄県の島嶼部に基地を建設したり、北朝鮮のミサイル実験などに敏感になって、国民に危機を煽れば煽るほど、子弟が自衛隊に入隊することに反対するでしょう。防衛費の42.8%が人件費・糧食費となっていますが、防衛費を2倍にしても自衛隊員が2倍に増えることは無理と考える方が常識的です。
そうなると、2倍に増えた防衛費は防衛装備費の増強に回されるのか。それは、次回にします。